

博士!
数学Ⅱに入ったら、急に角度の表し方が変わってわけがわからなくなったんだけど!

ほぅ、角度の単位じゃな。
360度を超える角度が出てきたり、『ラジアン』という聞き慣れない言葉が出てきたりしたのかの?

そうなんだよ!
360度で1周なんだから、それ以上回る意味がわからないし、そもそも『度(°)』で困ってないのに、なんでわざわざラジアンなんて新しい単位を使うの?

ふむ、実に自然な疑問じゃな。
実は、今まで使ってきた『度』という単位は、人間が扱いやすいように決めた人工的な数値に過ぎないのじゃ。
一方、ラジアンという単位は円の図形的な性質そのものから生まれた、数学的に極めて自然な測り方なんじゃよ。

人工的と自然?どういうこと?

順番に紐解いていくとしよう。
以前学んだ 「【数学Ⅰ】鈍角の三角比とは?なぜ単位円を使うのかと符号の理由」の単位円の考え方が、ここでも大きな鍵を握っておるぞ。
まずは360度を超える角度の考え方から見ていくとしよう。
360度を超えて回転する「一般角」とは何か?

360度で1周して元の位置に戻るのに、400度とか -30度とか言うのは何でなの?

単に『形』としての角を見るのではなく、『どれだけ回転したかという運動』として角を捉え直したからなのじゃ。
反時計回り(正の向き)と時計回り(負の向き)の回転

回転の運動ってこと?

そうじゃ。
原点を中心として、基準となる線(始線)からどれだけ回転したかを表す線を『動径』と呼ぶ。
この動径の回転向きに約束を作ったのじゃ。
反時計回りを正の向き、時計回りを負の向きと決めたんじゃよ。

なるほど!
反時計回りにぐるぐる回るのがプラスで、逆に時計回りに戻るのがマイナスなんだね。

その通りじゃ。
だから、反時計回りに30度回った位置は +30^\circ じゃが、時計回りに30度回った位置は -30^\circ と表すのじゃ。
動径の位置と一般角の表し方

じゃあ、400度はどうなるの?

400度は、正の向きに1周(360度)回って、さらに40度回った位置じゃな。
見た目の動径の位置は 40^\circ とまったく同じ場所になる。

あ!
見た目は同じ40度だけど、1周余分に回ってきた軌跡の違いを表すために400度って書くんだね!

見事じゃ!
このように、1周(360度)の何回転分かを整数 n を使って表した角度全体を『一般角』と呼ぶのじゃ。
動径の角を \alpha とすると、一般角 \theta は次のように表されるぞ。
\theta = \alpha + 360^\circ \times n \quad (n \text{ は整数})
なぜ「度」ではなく「ラジアン(弧度法)」を使うのか?

一般角の意味はわかったよ。
でも、だったらそのまま度数法(°)で一般角を表せばいいじゃない?
なんで『弧度法(ラジアン)』なんて新しい表現が必要なの?

ここが一番大切な本質じゃな。
度数法と弧度法の作られ方の違いを比較してみよう。
1周を360等分した「度数法」の人工的な理由

そもそも、なんで1周は360度なんだろう?

実は明確な数学的理由はないのじゃ。
古代のバビロニア天文学などで、太陽が天球を1周するのに約365日かかること(太陽が1日に動く角度が約1度)が分かっておった。
そこに、彼らが使っていた60進法や『360は割れる数が多くて計算しやすい』という都合が組み合わさり、1周を360等分する約束(度数法)が作られたのに過ぎんのじゃ。

えっ!?
360って、人間が勝手に決めた都合だったの!?

そうじゃ。
地球の公転周期や人間の都合で決めた数値だから、円という図形の幾何学的な性質とは何のつながりもないのじゃな。
半径と弧の長さの比で角度を測る「弧度法」の自然な理由

じゃあ、弧度法(ラジアン)はどうやって角度を決めているの?

円の『半径』と『弧の長さ』の比率で角度を測るのじゃ。
半径 r の円において、弧の長さがちょうど半径と同じ r になるような中心角を『1ラジアン(1 rad)』と定義したんじゃ。

半径の長さぶんだけ、円周の上をたどったときの角度が1ラジアンなんだね!

その通りじゃ!
円の大きさを拡大しても縮小しても、半径と弧の長さの比率は絶対に変わらんじゃろ?
つまり、人間の決めた360という数値に頼らず、円そのものの長さの比で角の大きさを直接測っているのじゃ。
度数法と弧度法の変換方法(180° = π rad)

半径と同じ弧の長さが1ラジアンなのはわかったけど、じゃあ半周(180度)や1周(360度)は、ラジアンで言うといくつになるの

円周の長さを求める公式を覚えておるかの?
半径 r の円の1周の長さは 2\pi r じゃな。
1ラジアンの定義と半径1の円(単位円)

あ!
1周の弧の長さが 2\pi r で、半径が r だから、1周の弧の長さは半径の 2\pi 倍になっているんだ!

素晴らしい!
ということは、360度はラジアンで表すと 2\pi \text{ rad} になるのじゃ。
半周の180度なら、その半分の \pi \text{ rad} じゃな。
180^\circ = \pi \text{ rad}

180^\circ = \pi ってこと!?
円周率の \pi(約3.14)が、角度の180度に対応するんだね!

そうじゃ!
\pi ラジアンとは、約3.14ラジアンという意味じゃ。
1ラジアンは度数法に直すと、およそ \dfrac{180^\circ}{\pi} \fallingdotseq 57.3^\circ になるぞ。
角度の相互変換と特別な角一覧

度数法から弧度法に変えるときは、どう計算すればいいの?

180^\circ = \pi を基準にすれば簡単じゃ。
1^\circ = \dfrac{\pi}{180} だから、度数法の値に \dfrac{\pi}{180} をかければ弧度法になる。
逆に弧度法から度数法にするには \pi に 180^\circ を代入すればよいのじゃ。

よく使う特別な角を整理してみるね!
30^\circ = \dfrac{\pi}{6}, \quad 45^\circ = \dfrac{\pi}{4}, \quad 60^\circ = \dfrac{\pi}{3}, \quad 90^\circ = \dfrac{\pi}{2}, \quad 180^\circ = \pi, \quad 360^\circ = 2\pi

見事に整理できたの。
数学Ⅱ以降では、単位の『rad(ラジアン)』を省略して単に \theta = \dfrac{\pi}{3} のように書くことが一般的なのじゃ。
弧度法が威力を発揮する公式(扇形の弧の長さと面積)

でも博士、わざわざラジアンを使うメリットって何があるの?
計算がややこしくなっただけな気がするんだけど…

ふふふ、実は弧度法を使うと、中学で習った扇形の公式が劇的にシンプルになるんじゃよ。
弧の長さ l = r θ の導出

中学のときの扇形の弧の長さの公式って、l = 2\pi r \times \dfrac{a^\circ}{360^\circ} で、すごく長かったよね。

そうじゃったな。
しかし、角度を弧度法 \theta(ラジアン)で表すとどうなるかの?
弧度法の定義そのものが『弧の長さ l は半径 r の \theta 倍』ということじゃったから、公式は次のようになるのじゃ。
l = r\theta

えっ!?たったこれだけ!?かけ算一発で出ちゃうの!?

そうなんじゃ!
\dfrac{a^\circ}{360^\circ} のような煩わしい割合の計算が完全に消え去ったじゃろ?
扇形の面積 S = 1/2 r^2 θ の導出

じゃあ、面積の公式はどうなるの?

面積 S も同じじゃ。中学での公式 S = \pi r^2 \times \dfrac{a^\circ}{360^\circ} に a^\circ = \theta \times \dfrac{180^\circ}{\pi} を代入して整理すると、こうなるぞ。
S = \dfrac{1}{2} r^2 \theta = \dfrac{1}{2} r l

S = \dfrac{1}{2} r l って、三角形の『底辺 \times 高さ \div 2』と同じ形じゃない!

その通りじゃ!
弧度法を使うことで、円や扇形の計算が多項式と同じようにシンプルに扱えるようになり、将来習う『微分・積分』でも圧倒的に計算が楽になるのじゃよ。
演習問題と解答・解説
問題 1 の解答
式:
(1) 490^\circ = 130^\circ + 360^\circ \times 1
(2) -120^\circ = 240^\circ + 360^\circ \times (-1)
答え:
(1) 130^\circ + 360^\circ \times n
(2) 240^\circ + 360^\circ \times n
解説:
(1) 490^\circ から 360^\circ を引くと 130^\circ となります。したがって、動径の位置は 130^\circ と同じであり、一般角は 130^\circ + 360^\circ \times n と表されます。
(2) 時計回りに 120^\circ 回転した位置は、反時計回りに 360^\circ - 120^\circ = 240^\circ 回転した位置と同じになります。したがって、0^\circ \leqq \alpha < 360^\circ の範囲で表すと 240^\circ + 360^\circ \times n となります。
問題 2 の解答
式:
(1) 135 \times \dfrac{\pi}{180} = \dfrac{3}{4}\pi
(2) \dfrac{5}{3} \times 180^\circ = 300^\circ
答え:
(1) \dfrac{3}{4}\pi
(2) 300^\circ
解説:
(1) 度数法から弧度法に変換するには \dfrac{\pi}{180} をかけます。135 と 180 を 45 で約分すると \dfrac{3}{4}\pi となります。
(2) 弧度法から度数法に変換するには \pi に 180^\circ を代入します。\dfrac{5}{3} \times 180^\circ = 5 \times 60^\circ = 300^\circ となります。
問題 3 の解答
式:
l = 6 \times \dfrac{\pi}{3} = 2\pi
S = \dfrac{1}{2} \times 6^2 \times \dfrac{\pi}{3} = 6\pi
答え:
弧の長さ l = 2\pi
面積 S = 6\pi
解説:
弧の長さの公式 l = r\theta より、l = 6 \times \dfrac{\pi}{3} = 2\pi となります。
面積の公式 S = \dfrac{1}{2} r^2 \theta より、S = \dfrac{1}{2} \times 36 \times \dfrac{\pi}{3} = 6\pi となります。(または S = \dfrac{1}{2} r l = \dfrac{1}{2} \times 6 \times 2\pi = 6\pi と計算することもできます。)
まとめ

度数法と弧度法の違いが理解できたよ!
人間が勝手に分けた360度よりも、円の長さの比で測るラジアンの方が、公式も簡単で数学的に自然なんだね。

理解が深まったようで何よりじゃ。
一般角と弧度法をマスターしたことで、いよいよ角度をどんな実数へも広げられる準備が整ったのじゃ。
次回は、この一般角と弧度法を使って描く『三角関数のグラフと周期性』について学んでいくとしよう。



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