
博士、前回の記事で三平方の定理の基本を学んで、直角三角形の3辺に a^2 + b^2 = c^2 が成り立つ理由はよく分かったよ!

うむ、面積を使った証明もしっかり腑に落ちておったからの。
図形の性質が文字を使った計算式と美しく結びつく面白さを実感できたはずじゃ。

でもね、前回出てきた 3, 4, 5 みたいな整数ばかりじゃなくて、実際の教科書の問題を見るとルートがいっぱい出てくるんだ。

良いところに目を付けたの。
直角三角形の辺の長さは、整数になることのほうがむしろ珍しいのじゃよ。

それに、いつも斜辺ばかり求めるわけじゃないよね?
直角をはさむ横の辺や縦の辺を求めたいときは、どうやって計算すればいいのかな?

まさにそこが今回の最重要テーマじゃ。
斜辺以外の長さを求めるときの立式の手順と、平方根を使った計算の作法を、順を追って解き明かしていこうかの。
斜辺以外の長さを求める引き算の仕組み
一番長い斜辺の2乗からもう1辺を引く

三平方の定理の基本の形って a^2 + b^2 = c^2 だから、足し算のイメージがすごく強いんだよね。

そうじゃな。
直角をはさむ2本の辺の長さをそれぞれ2乗して足すと、最も長い斜辺の2乗に等しくなる、というのが定理の基本形じゃ。

斜辺を求めるときは、2つの辺を2乗して足せばいいから分かりやすいよ。
でも、斜辺の長さが分かっていて、直角をはさむ辺の長さを知りたいときはどうするの?

直角三角形の3つの辺の中で、どれが最も長い辺かを思い出してみるのじゃ。

直角の向かい側にある斜辺だよね!
斜辺が絶対に一番長い辺になるんだ。

その通りじゃ。正方形の面積で考えてみるのじゃよ。
斜辺を一辺とする正方形の面積が最も大きく、それは残りの2辺を一辺とする正方形の面積を合わせたものになっておる。

あ、そうか!
一番大きい斜辺の正方形から、分かっているほうの正方形を切り取れば、残りの正方形の面積になるんだね!

見事な直観じゃ。
全体の大きな面積から一方をくり抜くのじゃから、計算としては自然と「引き算」になるのじゃよ。
方程式の移項で自然に引き算が現れる理由

面積のイメージだと引き算になる理由がすごく納得できるよ。
式で表すとどうなるのかな?

基本の等式から文字を変形してみようかの。斜辺を c、直角をはさむ2辺を a と b とすると、基本の関係式はこうじゃな。
a^2 + b^2 = c^2

ここで a の長さを知りたいときは、b^2 を右辺に移項すればいいんだね!

その通りじゃ。中1で学んだ方程式の移項のルールをそのまま使えばよい。
a^2 = c^2 - b^2

本当だ!
+ b^2 が右辺に移動して - b^2 になったよ。

同様に、もし b の長さを求めたい場合も、a^2 を移項すれば次のようになるのじゃ。
b^2 = c^2 - a^2

なるほど!
どちらの場合も、必ず一番大きい「斜辺の2乗」から「もう1辺の2乗」を引き算する形になっているね。

うむ。
新しい別の公式として丸暗記するのではなく、「方程式を移項しただけ」と捉えれば、何も迷うことはないのじゃよ。
2乗を外して長さに戻す平方根の計算
長さだからプラスだけを考える理由

引き算をして a^2 の値が分かったら、次は2乗を外すんだよね。

そうじゃ。例えば、斜辺が 5\text{ cm}、直角をはさむ1辺が 3\text{ cm} の直角三角形で、残りの1辺 x\text{ cm} を求めてみようかの。

さっきの引き算の式を使うと、次のようになるね。
\begin{aligned} x^2 &= 5^2 - 3^2 \\ &= 25 - 9 \\ &= 16 \end{aligned}

うむ、正確な立式と計算じゃ。x^2 = 16 ということは、2乗して 16 になる数を探すことになる。中3の最初に学んだ平方根の出番じゃな。

2乗して 16 になる数は、+4 と -4 の2つがあったよね!
二次方程式のときは両方答えていた気がするけれど、図形の場合はどうするの?

素晴らしい着眼点じゃ。
数学の純粋な方程式としては確かに x = \pm 4 が正しい。じゃが、いま私たちが求めておるのは何じゃろうか?

三角形の「辺の長さ」を求めているんだ!
長さがマイナス 4\text{ cm} なんて、現実には存在しないよね。

その通りじゃ。
図形の長さは必ず正の数(0 より大きい数)でなければならん。したがって答案を書くときは、必ず「x > 0 であるから」という理由を添えて、正の数だけを選ぶのが鉄則なのじゃよ。
x > 0 \text{ より、} x = 4

なるほど!
長さを扱っているから、マイナスを切り捨ててプラスだけを採用するんだね。理由が分かるとすごくすっきりするよ。
ルートの中を簡単にして最もスリムにする

でも博士、2乗して 16 みたいな綺麗な数字にならないときは、どうやって書けばいいの?

そこで活躍するのが記号「\sqrt{\phantom{a}}(根号・ルート)」じゃよ。
例えば x^2 = 20 となった場合、そのまま正の平方根をとって x = \sqrt{20} と表すのじゃ。

あ、そうか!整数にならないときはルートをかぶせればいいんだね。
でも、学校のテストで \sqrt{20} のまま書いたらバツにされた友達がいた気がするんだけど……。

うむ、根号の中にある数は、外に出せる二乗の成分をすべて外に出して、できる限りスリムな a\sqrt{b} の形に直すのが数学の絶対的な作法なのじゃ。

あ、平方根の単元でやったやつだ!
20 を素因数分解するんだよね。

その通りじゃ。
20 = 2^2 \times 5 であるから、2^2 を根号の外に出して 2 にすることができる。
\sqrt{20} = \sqrt{2^2 \times 5} = 2\sqrt{5}

三平方の定理の計算って、直角三角形の図形の問題に見えて、実は平方根の変形スキルがそのまま試されているんだね!

まさにその通りじゃ。
三平方の定理は、中3で学んできた「展開・因数分解」「平方根」「二次方程式」という計算の道具たちが一堂に会する総合舞台なのじゃよ。
演習問題
三平方の定理を用いた辺の長さの計算について確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
三平方の定理より、斜辺 x について次の関係式が成り立ちます。
\begin{aligned} x^2 &= 2^2 + 5^2 \\ &= 4 + 25 \\ &= 29 \end{aligned}
x > 0 であるから、
x = \sqrt{29}
答え:\sqrt{29}\text{ cm}
問題 2 の解答・解説
三平方の定理より、斜辺以外の辺 x について次の関係式が成り立ちます。
\begin{aligned} x^2 + 4^2 &= 6^2 \\ x^2 &= 6^2 - 4^2 \\ &= 36 - 16 \\ &= 20 \end{aligned}
x > 0 であるから、
\begin{aligned} x &= \sqrt{20} \\ &= 2\sqrt{5} \end{aligned}
根号の中の二乗の因数を外に出し、最も簡単な形にします。
答え:2\sqrt{5}\text{ cm}
問題 3 の解答・解説
三平方の定理より、求める辺 x について次の関係式が成り立ちます。
\begin{aligned} x^2 + 2^2 &= 8^2 \\ x^2 &= 8^2 - 2^2 \\ &= 64 - 4 \\ &= 60 \end{aligned}
x > 0 であるから、
\begin{aligned} x &= \sqrt{60} \\ &= \sqrt{2^2 \times 15} \\ &= 2\sqrt{15} \end{aligned}
60 を素因数分解すると 2^2 \times 15 となるため、2 を根号の外に出します。
答え:2\sqrt{15}\text{ cm}
まとめ

斜辺を求めるときは「2乗の足し算」、斜辺以外の辺を求めるときは「2乗の引き算」になる理由が、面積のくり抜きと方程式の移項の両方からすごくよく分かったよ!

うむ!そして計算の最後には「長さだからプラスのみ(x > 0)」という条件を忘れず、平方根を a\sqrt{b} の最もスリムな形に整える。
この一連の流れが自然に身につけば、三平方の計算で困ることはまずないのじゃよ。

ルートが出てきても、これまで勉強してきた平方根の道具を使えば怖くないね。

頼もしい限りじゃ。
さて、今回はいろいろな長さの直角三角形を計算したが、実は三角定規のように「角の大きさが決まると、3辺の長さの比が自動的に決まる」という極めて特別な直角三角形が存在するのじゃ。

三角定規の形!
あの 45^\circ と 60^\circ の三角形だね。比が決まっているってどういうことなんだろう?

ふふふ、次回はその謎に迫るのじゃ。
「なぜ三角定規の辺の比は決まっておるのか」という、高校数学の三角比にも直結する重要な扉を開いていこうかの。

三角定規の秘密、早く知りたいな!
次回もよろしくお願いします、博士!

うむ、またいつでも探究の続きをしにおいで、すくぞう。

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