
博士、前回の相似や面積比で「2乗」を勉強したけれど、三角形の辺の長さを計算するときにも2乗を使う、すごく有名な定理があるって聞いたんだ。

おお、よく知っておるな!
それは中学数学の図形分野における最大の山場、「三平方の定理」のことじゃな。

そう、それ!
a^2 + b^2 = c^2 っていう式だよね。でもね博士、なんで辺の長さをわざわざ2乗して足すの?長さなんだから、普通に足しちゃダメなのかな?

ふふふ、実に鋭い疑問じゃな。
なぜ単に足すのではなく2乗するのか、そしてどんな三角形で成り立つのか、じっくり紐解いていこうかの。
直角三角形だけに現れる不思議な関係
直角の向かい側にある一番長い斜辺

まず、三平方の定理ってどんな三角形でも使えるの?

よい問いじゃ。
この定理が使えるのは、1つの角が直角(90^\circ)である「直角三角形」だけに限られるのじゃよ。

直角三角形だけなんだね。
直角三角形の3本の辺って、それぞれ名前があるの?

直角をはさむ2本の辺と、直角の真向かいにある1本の辺に分かれるのじゃ。
この直角の向かい側にある辺を「斜辺」と呼ぶのじゃよ。

斜辺だね。
図で見ると、斜辺が一番長そうだね。

その通りじゃ。
直角三角形においては、斜辺が3つの辺の中で必ず最も長くなるのじゃよ。

一番長い辺が斜辺で、残りの2辺が直角をはさんでいるんだね。

うむ。三平方の定理の式 a^2 + b^2 = c^2 において、c が必ずこの「斜辺」を表しておるのじゃ。
長さを測らずに計算で割り出す仕組み

直角をはさむ2辺が a と b で、斜辺が c なんだね。
でも、この関係式があると何が嬉しいの?

2つの辺の長ささえ分かれば、残りの1辺の長さを定規で測ることなく、計算だけで正確に割り出せるのじゃよ。

定規で測らなくても、計算だけで長さが分かっちゃうの?

そうじゃ。
例えば、直角をはさむ2辺の長さが 3 と 4 だとしようかの。

その2つを足すと 3 + 4 = 7 だけど、斜辺の長さは 7 になるの?

三角形の2辺の長さを足したものは、残りの1辺よりも必ず長くなるという決まりを思い出してみるのじゃ。
もし斜辺が 7 なら、一直線に伸びきってしまって三角形にならんじゃろ?

あ、そっか!
2辺を足した長さより、斜辺は短くならなきゃいけないんだ。だから単なる足し算じゃダメなんだね。

その通りじゃ。
そこで登場するのが「2乗の足し算」なのじゃよ。
なぜ2乗するのか?面積で見るピタゴラス
3つの辺の上に正方形を描いてみる

でも博士、どうして「長さの2乗」なんて考えるの?

数式だけで見ると不思議に思えるが、図形として眺めると一目瞭然なのじゃ。
「長さの2乗」とは、図形の世界では何を意味するか覚えておるかの?

長さの2乗……あっ!正方形の面積だ!

見事じゃ!
1辺が a の正方形の面積は a^2、1辺が b なら b^2、1辺が c なら c^2 じゃな。

ということは、直角三角形の3つの辺のそれぞれに正方形を描くってこと?

まさにその通りじゃ。
直角三角形のそれぞれの辺を一辺とする3つの正方形を描いてみるのじゃよ。

直角をはさむ2辺にできる正方形の面積が a^2 と b^2 で、斜辺の上にできる一番大きな正方形の面積が c^2 なんだね。

うむ。三平方の定理が主張しておるのは、「小さい2つの正方形の面積を合わせると、斜辺の正方形の面積とぴったり同じになる」という事実なのじゃ。

面積を合わせるとぴったり同じになるの!?
そんなの、どうやって確かめるの?
4つの直角三角形を並べて正方形を作る

古代ギリシャの数学者ピタゴラスが考えたとされる、実に美しい証明方法を見てみようかの。

ピタゴラスの証明!知りたい!

直角をはさむ2辺の長さを a, b、斜辺を c とする合同な直角三角形を4枚用意するのじゃ。

同じ直角三角形が4枚あるんだね。

この4枚の直角三角形を、1辺が a + b の大きな正方形の四隅にぴったり敷き詰めてみるのじゃ。

外側に大きな正方形ができて、真ん中にすき間ができるね。
このすき間はどんな形になるの?

真ん中の四角形の4つの辺は、すべて直角三角形の斜辺 c になっておるな。

うん、4辺の長さはぜんぶ c だね。
角度はどうなるの?

直角三角形の直角以外の2つの鋭角を足すと何度になるかの?

三角形の内角の和は 180^\circ で直角が 90^\circ だから、残りの2つの角を足すと 90^\circ だよ。

そうじゃな。
大きな正方形の1辺である 180^\circ の直線からその2つの角を引くと、真ん中の四角形の角は 180^\circ - 90^\circ = 90^\circ になるのじゃ。

4つの角がぜんぶ直角で、4つの辺がぜんぶ c……ということは、真ん中のすき間は1辺が c の正方形だ!

その通りじゃ!
真ん中の正方形の面積は c^2 じゃな。

うん、c \times c = c^2 だね。

では、この大きな正方形全体の面積を2通りの式で表してみよう。
まず、外側の大きな正方形は1辺が a + b じゃから、全体の面積は次のようになるな。
(a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2

中3で習った展開の公式だね!

うむ。
一方で、この大きな正方形は「真ん中の正方形1つ」と「直角三角形4枚」を合わせたものでもあるのじゃ。

直角三角形1枚の面積は、底辺が a で高さが b だから \dfrac{1}{2}ab だね。それが4枚あるから……
4 \times \dfrac{1}{2}ab = 2ab
になるよ!

見事じゃ!真ん中の正方形 c^2 と4枚の三角形 2ab を合わせると、全体の面積は次のようになるな。
c^2 + 2ab

ああっ!全体の面積はどちらも同じ正方形だから、2つの式はイコールで結べるんだ!
a^2 + 2ab + b^2 = c^2 + 2ab

両辺から同じ 2ab を引いてみるのじゃ。
何が残るかの?

両辺から 2ab を引くと……
a^2 + b^2 = c^2
になった!本当に三平方の定理が出てきたよ!

ふふふ、図形を敷き詰めて面積を比べただけで、見事に定理が証明できたじゃろ。

図形と式が完全に繋がったよ!
「2乗の足し算」っていうのは、正方形の面積の足し算だったんだね。
公式の意味と直角三角形かどうかの判定
2乗の足し算が斜辺の2乗に一致する条件

さっきの 3 と 4 の直角三角形だと、斜辺はどうなるの?

実際に計算してみようかの。
直角をはさむ2辺が 3 と 4 じゃから、それぞれの2乗を計算してみるのじゃ。

3^2 = 9 で、4^2 = 16 だね。それを足すと……
\begin{aligned} 3^2 + 4^2 &= 9 + 16 \\ &= 25 \end{aligned}
になるよ。

うむ。c^2 = 25 ということは、2乗して 25 になる正の数は何かの?

5 だ!
だから斜辺の長さは 5 なんだね!

その通りじゃ。
3, 4, 5 は最も有名な直角三角形の3辺の比じゃよ。

3 + 4 = 7 じゃなくて、3^2 + 4^2 = 5^2 になるんだね。
逆も成り立つ?3辺から直角を見抜く方法

ここで、もう1つ大切な論理を学んでおこうかの。
それは「三平方の定理の逆」じゃ。

逆?どういうこと?

今までは「直角三角形ならば、a^2 + b^2 = c^2 が成り立つ」という向きで考えてきたな。

うん、直角三角形であることが前提だったね。

実はその逆で、「ある三角形の3辺が a^2 + b^2 = c^2 を満たすなら、その三角形は c を斜辺とする直角三角形である」ということも成り立つ技能なのじゃ。

角度を分度器で測らなくても、3本の辺の長さを計算するだけで直角があるかどうかが分かっちゃうの?

その通りじゃよ。一番長い辺の2乗が、残りの2辺の2乗の和と等しくなれば、その向かい合う角は絶対に直角になるのじゃ。

大昔の大工さんたちも、縄の長さを 3, 4, 5 にして直角を作っていたって聞いたことがあるけど、この原理だったんだね!

ほぅ、よく知っておるの。
まさにその通りじゃよ。
演習問題
直角三角形の斜辺の計算と、三平方の定理の逆を用いた直角三角形の判定について確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
【解答】
10
【解説】
直角をはさむ2辺の長さを a = 6, b = 8、斜辺の長さを c とします。
三平方の定理より、次の等式が成り立ちます。
a^2 + b^2 = c^2
数値を代入して計算します。
\begin{aligned} c^2 &= 6^2 + 8^2 \\ &= 36 + 64 \\ &= 100 \end{aligned}
c > 0 より、
\begin{aligned} c &= \sqrt{100} \\ &= 10 \end{aligned}
したがって、斜辺の長さは 10 です。
答え:10
問題 2 の解答・解説
【解答】
直角三角形である。(長さ 13 の辺の向かい側の角が直角)
【解説】
与えられた3辺の中で、最も長い辺は 13 です。
最も長い辺の2乗を計算します。
13^2 = 169
残りの2辺の2乗の和を計算します。
\begin{aligned} 5^2 + 12^2 &= 25 + 144 \\ &= 169 \end{aligned}
したがって、次の関係が成り立ちます。
5^2 + 12^2 = 13^2
三平方の定理の逆より、3辺の長さが a^2 + b^2 = c^2 を満たす三角形は、長さ c の辺を斜辺とする直角三角形になります。
よって、この三角形は直角三角形であり、最も長い辺である長さ 13 の辺の向かい側の角が直角(90^\circ)になります。
答え:直角三角形である(長さ 13 の辺の向かい側の角が直角)
まとめ

博士、三平方の定理がなぜ2乗の足し算になるのか、面積のパズルから綺麗に納得できたよ!

うむ!
公式 a^2 + b^2 = c^2 をただ文字として丸暗記するのではなく、「直角三角形の周りに立つ正方形の面積の関係」として捉えられたのは大きな一歩じゃよ。

正方形の中に直角三角形を4枚敷き詰める証明も、展開の公式と組み合わさっていて感動したよ。
3辺の長さから直角が見抜ける「逆」の考え方も分かったしね。

素晴らしい理解じゃ。
今回は 3, 4, 5 や 6, 8, 10 のように綺麗な整数になる例を扱ったが、実際の図形では斜辺が整数にならない場合もたくさん出てくるのじゃ。

整数にならないとき……あ、そこで「平方根(ルート)」を使うんだね!

その通りじゃ!
次回は、斜辺以外の長さを求める「引き算の立式」や、平方根を使った本格的な計算方法をじっくり学んでいこうかの。

うん!ルートの計算も復習しながら、どんな直角三角形でも解けるようになりたいな。
次回もよろしくね、博士!

ふふふ、頼もしいのぅ。
またいつでも訪ねておいで、すくぞう。


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