

博士!
スピード違反の取締カメラって、カシャッと一瞬の写真しか撮ってないでしょ?

ふむ、そうじゃな。
車が通過したその瞬間の写真を記録しておるの。

あれがずっと不思議なんだよ。
速度って「距離÷時間」だから、時間が経過しないと計算できないじゃん?
一瞬の写真ってことは時間の経過がゼロだから、動いてないのと同じなのにどうして「時速80km」ってスピードがわかるの?

素晴らしい疑問じゃな、すくぞう。
時間が止まっている一瞬なのにスピードが存在する……
まさにそれこそが、人類が「微分」を発明した最大の動機なのじゃよ。

えっ、スピード違反のカメラって微分を使ってるの?

その通りじゃ。
今回は、2点間の大雑把な変化を表す「平均変化率」から、極限を使って一瞬の変化を捉える「微分係数」へのステップを順番に紐解いていくとしよう。
前回学んだ「極限(lim)」が大活躍するぞ。
「平均の変化率」と「瞬間の変化率」の違い

平均の変化率と瞬間の変化率って、どう違うの?

では、身近な例で考えてみよう。
すくぞうが東京から大阪までの約500kmを、新幹線に乗って2時間半で移動したとするじゃろ?

うん、乗ったことあるよ!

このとき「500km ÷ 2.5時間 = 時速200km」と計算できるのじゃが、新幹線はずっと時速200kmぴったりで走り続けていたかの?

ううん、駅を出るときはゆっくりだし、途中で時速280kmくらいまで加速することもあるよね。

その通りじゃな。
全体をまとめて「平均したら時速200kmだった」というのが「平均の変化率」じゃ。
一方で、走っている最中にメーターが指している「まさに今この瞬間の速度」が「瞬間の変化率」なのじゃよ。

なるほど!
全体をざっくりまとめたのが平均変化率で、その瞬間のスピードが瞬間の変化率なんだね。

数学のグラフで言えば、曲線上の「2つの点を通る直線(割線)の傾き」が平均変化率じゃ。
そして、その2つの点を極限まで近づけて「1点での接線の傾き」にしたものが瞬間の変化率(微分係数)なのじゃよ。
2つの点をどこまでも近づけると何が起きるのか?

でも、2つの点を近づけるってどうやって計算するの?

まず、関数 y = f(x) のグラフ上で、x が a から a + h まで変化するときの平均変化率を式にしてみよう。
変化率は「y の増加量 ÷ x の増加量」じゃから、こう書けるのじゃ。
\dfrac{f(a+h) - f(a)}{h}

x の幅が h で、y の幅が f(a+h) - f(a) なんだね。
これが2点を通る直線の傾きか!

そうじゃ。ここで、前回のステップ1で学んだ最強の道具「極限(lim)」を合体させるのじゃ。
この幅 h をゼロに向かって限りなく近づけてみるぞ。
\lim_{h \to 0} \dfrac{f(a+h) - f(a)}{h}

あっ!
幅 h を0に近づけるから、2つの点が重なるくらい近くなっていくんだ!

その通りじゃ。
h は完全なゼロではないから0割り事故は起きん。じゃが、2つの点はほぼ同じ場所まで近づくのじゃ。
微分係数 f'(a) の正体と接線の傾き

2つの点が重なるくらい近づくと、直線はどうなっちゃうの?

2点を通っていた直線が、まるで1点だけでグラフに触れているような「接線」に変化するのじゃ。

あ!2点を結ぶ直線だったのが、点が近づくにつれてギュッと重なって、その点での「接線」になっちゃった!

見事な観察眼じゃ。この「平均変化率の幅 h を極限までゼロに近づけた値」のことを、x = a における「微分係数」と呼び、f'(a) という記号で書くのじゃよ。
f'(a) = \lim_{h \to 0} \dfrac{f(a+h) - f(a)}{h}

f'(a)(エフダッシュエー)って読むんだね!
学校の授業でもそう習ったよ。

うむ。
記号本来の名前はプライム(′)と言うのじゃが、日本の学校では慣習的に「ダッシュ」と呼ぶことが多いのじゃ。
この f'(a) こそが「瞬間の変化率」であり、時間の経過がゼロになる事故を回避しながら「その一瞬間における傾き(接線の傾き)」を数字として叩き出した結果なのじゃよ。
演習問題:平均変化率と微分係数の計算
問題 1 の解答・解説
平均変化率は、x の増加量に対する y の増加量の割合であるため、公式 \dfrac{f(b) - f(a)}{b - a} を用いて計算する。
a = 1, b = 3 を代入すると、
f(1) = 1^2 = 1
f(3) = 3^2 = 9
したがって、平均変化率は以下のようになる。
\dfrac{f(3) - f(1)}{3 - 1} = \dfrac{9 - 1}{3 - 1} = \dfrac{8}{2} = 4
答:4
問題 2 の解答・解説
微分係数の定義式 f'(a) = \lim_{h \to 0} \dfrac{f(a+h) - f(a)}{h} において、a = 2 を代入する。
f(2) = 2^2 = 4
f(2+h) = (2+h)^2 = 4 + 4h + h^2
分子の増加量を計算すると、
f(2+h) - f(2) = (4 + 4h + h^2) - 4 = 4h + h^2 = h(4 + h)
これを定義式に代入すると、h \neq 0 であるため分子と分母を h で約分することができる。
f'(2) = \lim_{h \to 0} \dfrac{h(4 + h)}{h} = \lim_{h \to 0} (4 + h)
ここで h \to 0 とすると、
f'(2) = 4 + 0 = 4
答:4
まとめ:変化の幅をゼロに近づけた極限値こそが微分係数

平均の変化率は「2点を通る直線の傾き」で、幅を極限までゼロに縮めた瞬間の変化率が「接線の傾き(微分係数)」なんだね!

うむ、見事に整理できたの。
一瞬間であっても「幅を極限まで近づける」という発想を使うことで、数学的に傾きを計算できるようになったのじゃよ。

でも博士、これって毎回 x = 1 とか x = 2 とか、特定の数字ごとに \lim の計算をしなきゃいけないのかな?
ちょっと大変そう……。

よい疑問じゃな。
毎回個別に計算しなくても、どんな x でも一発で接線の傾きがわかる「万能の関数」を作ることができるのじゃ。

えっ、万能の関数!?
そんな便利なものがあるの?

それこそが次回学ぶ「導関数(どうかんすう)」じゃ。
次回は、導関数の公式と「dy/dx」という謎の記号の正体に迫っていくとしよう。

万能の関数、すごく気になる!
次回もよろしくね、博士!



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