
博士!
前回教えてもらった方程式の解き方はバッチリできるようになったよ!
移項して天秤を操作すれば、x = \text{数字} の形に迷わず持っていける。
でも、教科書の次のページを開いたら「文章題」が出てきて、途端に手が止まっちゃったんだ。
式が最初から書いてあれば解けるのに、長い文章からどうやって式を作ればいいのか全然分からないんだよ。

ふむ、方程式の計算は解けるのに、文章題になった瞬間に手が止まってしまうというのは、中学生が最も多く直面する壁のひとつじゃな。
「何を x に置けばいいのか」「どうやってイコールで繋げばいいのか」が分からず、立ち往生してしまうのじゃ。
じゃが、文章題で式が作れない原因は、頭の良し悪しではなく「算数の解き方」を引きずってしまっていることにあるのじゃよ。
文字と方程式の本当の役割を知れば、文章題は難しいどころか、算数よりもずっと素直に解ける道具だと分かってくるはずじゃ。
今回も基本の原理から、順番に紐解いていこうかの。
なぜ文章題で式が作れないのか?算数と数学の「思考の逆転」

算数の解き方を引きずっているって、どういうこと?
小学校の文章題だって、ちゃんと式を書いて解いてきたよ?

そこがまさに、算数と数学の決定的な違いなのじゃ。
まずは、問題文に対する「思考の向き」が真逆になっていることに気づく必要があるの。
算数は「逆算」、数学は「そのまま書く」

小学校の算数の文章題を思い出すのじゃ。
例えば「1本70円の鉛筆を何本かと、120円の消しゴムを1個買ったら、代金の合計が470円でした。鉛筆は何本買いましたか?」という問題があったとする。
算数では、これをどうやって解いておったかの?

えーっと、合計の470円から消しゴムの120円を引いて、残った350円を鉛筆1本の値段70円で割るから……
(470 - 120) \div 70 = 5 で、答えは5本!

見事じゃな。じゃが、頭の中で何が起きていたか振り返ってみるのじゃ。
すくぞうは、「最後に起きた買い物」から逆戻りして、引き算や割り算を頭の中で組み立ててから式を書いたじゃろう?
これが算数の「逆算」の思考じゃ。
ゴール(合計金額)からスタート地点(鉛筆の本数)へ向かって、頭の中で計算の道筋を完全に組み立てなければ式が書けないのじゃ。

たしかに!
頭の中で「こうやって計算すれば答えが出るはずだ」って道筋が見えないと、式が1行も書けないよ。

そうじゃろう。問題が少し複雑になって「何個か配ったら余って、別の配り方をしたら足りない」などとなると、頭の中の逆算がパンクしてしまうのじゃ。
それに対して、数学の方程式は「逆算」を一切必要としない。
問題文のストーリーの順番通りに、そのまま左から右へ言葉を並べるだけで式が完成するのじゃよ。
「わからない数を分かったフリをする」のが文字の力

逆算しなくていいの?
そんな魔法みたいなことができるの?

魔法ではないのじゃよ。文字 x を使うからこそできる技じゃ。
方程式の最大の強みは、「まだ分かっていない答えを、最初から分かったフリをして話を進められる」という点にある。

分かったフリ?

そうじゃ。鉛筆が何本か分からないなら、とりあえず「x 本買った」と決めてしまうのじゃ。
すると、買い物のお話は最初から最後まで普通の掛け算と足し算で語れるじゃろう。
「1本70円の鉛筆を x 本買ったから、鉛筆代は 70x 円」
「そこに120円の消しゴムを足したから、買い物の合計は 70x + 120 円」
「それが470円になったから、70x + 120 = 470」
どうじゃ?頭の中で逆算など1ミリもしていないじゃろう。

あ!本当だ!
「鉛筆を買って、消しゴムを足したら、470円になった」って、問題文に書いてある順番のまま式になってる!

その通りじゃ。
小学校の算数は「式=答え」を出すものじゃった。
じゃが、中学校の方程式は「問題文の場面を、そのまま文字でスケッチしたもの」なのじゃよ。
答えを出す計算は、式を立てた後で移項を使って天秤を動かせば、機械的に求まるのじゃ。
等号(=)の結び方!天秤の左右に「同じもの」を乗せる

問題文をそのまま文字で書けばいいのは分かったよ。
でも、イコール(=)で結ぶときに、どれとどれをイコールで繋げばいいのか迷っちゃうことがあるんだ。

等号の結び方に迷ったときは、前回学んだ「天秤」の原則に立ち返るのじゃ。
イコールは「計算結果を書く矢印」ではなく、「左右がつり合っている」という状態を表す記号じゃったな。
同じ数量を「2つの別の言い方」で表す

文章題で方程式を立てる極意は、「同じひとつの数量を、2通りの別の表現で言い換える」ことじゃ。
左のお皿に乗せるものと、右のお皿に乗せるものは、見た目の式は違っていても「指し示している中身は全く同じもの」でなければならん。

同じものを2通りの言い方で表す?

例えば、先ほどの買い物の問題で言えば、注目した数量は「支払った代金の合計」じゃった。
左のお皿には「鉛筆代 70x 円 + 消しゴム代 120 円」という計算の式を乗せた。
右のお皿には、レジで請求された「470 円」という金額を乗せた。
どちらも「今回の買い物で払う総額」という同じ数量を表しておるからこそ、イコールで結んで天秤がつり合うのじゃ。
70x + 120 = 470
左辺(品物の合計金額)と、右辺(実際の支払額)が、イコールでピッタリつり合っておるじゃろう。
「言葉の天秤」を作ってから数式に直す

立式が苦手な人は、いきなり x や数字を組み合わせて数式を作ろうとして混乱してしまうことが多い。
そうではなく、まずは日本語で「言葉の天秤」をノートに書き出してみるのをおすすめするのじゃ。

言葉の天秤?

そうじゃ。数式にする前に、日本語だけでイコールの関係をメモするのじゃよ。
「鉛筆の代金 + 消しゴムの代金 = 合計金額」
このように言葉の骨組みを書いてから、それぞれの部分に x や数字を当てはめていく。
言葉の骨組みさえ正しければ、数式への翻訳で迷うことはなくなるのじゃ。
文章題を解く4つのステップ

なるほど、言葉の天秤を作ってから数式に翻訳するんだね。
実際に問題を解くときは、どういう順番で進めればいいの?

基本の手順を 4 つのステップに整理しておこうかの。
どんなに問題文が長くなっても、この 4 つの順序通りに進めれば確実に立式できるのじゃ。
手順1:求めたい数量をxと置く

まずは準備の第1歩じゃ。
何を x にしたのか、単位をつけて必ず答案の最初に書くのじゃよ。
「鉛筆の本数を x 本とする」「生徒の人数を x 人とする」のように明記する。
何を x にしたかが曖昧だと、途中で自分が何を計算しているのか見失ってしまうからのぅ。
手順2:数量の関係を「言葉の天秤(日本語の等式)」にする

問題文を読み、同じ数量を表している 2 つの事柄を見つけて、イコールで結んだ言葉の式を作るのじゃ。
- 「配った飴の総数 = 用意した飴の総数」
- 「行きの道のり = 帰りの道のり」
このように、左辺と右辺が同じものを指すように日本語で骨組みを作る。
手順3:言葉の式を数式に翻訳して解く

骨組みができたら、いよいよ数式への翻訳じゃ。
手順2で作った言葉の式に、x や具体的な数値を当てはめて方程式を作る。
立式できたら、前回学んだ等式の性質(移項)を使って x の値を計算するのじゃ。
手順4:解が問題の条件に適しているか確かめる

方程式の計算で出た数字が、現実の問題として意味が通るかを確認するのじゃ。
もし「鉛筆の本数」を求めているのに答えが「-3 本」や「2.5 本」になったら、どこかで立式か計算を間違えておる証拠じゃな。
問題の文脈に合っていることを確かめてから、単位をつけて答えを書くのじゃ。

なるほど!
何を x に置いたか書いて、言葉の式を作って、数式に直して解いて、最後に確かめる。
この4ステップなら、どこで自分がつまずいているかもすぐ分かるね!
典型パターンで見る立式の実際

では、中学校の数学でよく登場する代表的な 2 つのパターンで、実際に立式の手順を体験してみようかの。
パターン1:代金と買い物の問題

まずは基本の買い物問題じゃ。
問題:
1個120円のりんごと、1個80円のみかんを合わせて10個買いました。
代金の合計が960円だったとき、りんごは何個買いましたか?

あ、これ小学校のつるかめ算でやったやつだ!
全部みかんだと仮定して……
って考えるんだよね?

算数ならつるかめ算の仮定を使うところじゃな。
じゃが、方程式なら仮定など不要で、文章の通りに立式できるのじゃ。
先ほどの4ステップで進めてみるのじゃ。
手順1:未知数を置く
求めたいのは「りんごの個数」じゃから、これを x 個とおく。
すると、みかんの個数はどう表せるかの?合わせて10個買っておるのじゃ。

合わせて10個だから、10個からりんごの x 個を引けばいいんだね。
みかんは「10 - x 個」だ!

その通りじゃ!
では、手順2の言葉の式はどうなるかの?

「りんごの代金 + みかんの代金 = 合計金額」だね!

大正解じゃ。
では、手順3としてこれを数式に翻訳してみるのじゃ。

りんごは120円が x 個だから 120x 円。
みかんは80円が (10 - x) 個だから 80(10 - x) 円。
合計が960円だから……
120x + 80(10 - x) = 960
できた!式が立てられたよ!

素晴らしい!あとはこれを解くだけじゃ。
カッコを展開して整理してみようかの。
\begin{aligned} 120x + 800 - 80x &= 960 \\ 40x + 800 &= 960 \\ 40x &= 960 - 800 \\ 40x &= 160 \\ x &= 4 \end{aligned}

りんごは4個と出た。
みかんは 10 - 4 = 6 個じゃな。
確かめをしてみるのじゃ。
\begin{aligned} 120 \times 4 + 80 \times 6 &= 480 + 480 \\ &= 960 \end{aligned}
合計960円でピッタリ一致するじゃろう。
答えはりんご4個となるのじゃよ。

つるかめ算のややこしい計算をしなくても、そのまま式にして解くだけで答えが出ちゃった!
パターン2:余りと不足の問題(過不足)

次につまずきやすいのが、「配ると余ったり足りなくなったりする」過不足の問題じゃ。
問題:
何人かの子どもに飴を配ります。
1人に4個ずつ配ると3個余り、1人に5個ずつ配ると2個足りなくなります。
子どもの人数と、飴の総数をそれぞれ求めなさい。

うわっ、これ苦手なんだよ!
余ったり足りなかったりして、どうやってイコールで結べばいいのか分からなくなるんだ。

ここでも「言葉の天秤」が大活躍するのじゃ。
この問題で、配り方を変えても「絶対に変わらないもの」は何じゃと思う?

絶対に変わらないもの?
子どもの人数も変わらないし……あ、最初に用意してある「飴の全体の個数」も絶対に変わらないよ!

その通りじゃ!飴の全体の個数は、どんな配り方をしようと机の上に最初からある分量で一定じゃな。
つまり、天秤の左皿にも右皿にも「飴の全体の個数」を乗せればよいのじゃ。
「4個ずつ配ったときの飴の総数 = 5個ずつ配ったときの飴の総数」

なるほど!どちらのお皿も「飴の総数」を表せばいいんだ!

そうじゃ。
では、子どもの人数を x 人として、それぞれのお皿を数式に翻訳してみるのじゃ。

子どもの人数が x 人だから……
1人に4個ずつ配ると、配った分は 4x 個で、まだ3個余ってるから、飴の総数は「4x + 3」個だ!
次に、1人に5個ずつ配ろうとすると 5x 個必要だけど、2個足りないんだから、飴の総数は「5x - 2」個だ!

見事な翻訳じゃ!
どちらも同じ飴の総数を表しておるのじゃから、イコールで結べるじゃろう。
4x + 3 = 5x - 2

あとは、移項して天秤を操作するだけじゃ。
\begin{aligned} 4x - 5x &= -2 - 3 \\ -x &= -5 \\ x &= 5 \end{aligned}

x = 5 と求まったので、子どもの人数は5人じゃな。
では、飴の総数は何個になるかの?

左の式に代入すると、4 \times 5 + 3 = 23 個!
念のため右の式にも代入してみると、5 \times 5 - 2 = 23 個!
両方ともピッタリ23個になったよ!

完璧じゃ!子どもの人数は5人、飴の総数は23個じゃ。
「余るからプラス」「足りないからマイナス」と機械的に覚えるのではなく、「机の上にある実際の飴の数は何個なのか」を考えれば、自然と符号も決まるのじゃよ。
演習問題

原理と手順が整理できたところで、実際に自分で手を動かして立式してみるのじゃ。
焦らずに「何を x と置くか」「言葉の天秤はどうなるか」から書き出してみようかの。
問題 1 の解答・解説
解答:
ボールペンは 3本
解説:
手順1:未知数を決める
求めたい「ボールペンの本数」を x 本と置きます。
合わせて8本買ったので、鉛筆の本数は (8 - x) 本と表せます。
手順2:言葉の天秤を作る
「鉛筆の代金 + ボールペンの代金 = 合計金額」
手順3:数式に翻訳して解く
鉛筆の代金は 80(8 - x) 円、ボールペンの代金は 110x 円、合計金額は730円です。
80(8 - x) + 110x = 730
カッコを展開して整理します。
\begin{aligned} 640 - 80x + 110x &= 730 \\ 30x + 640 &= 730 \\ 30x &= 730 - 640 \\ 30x &= 90 \\ x &= 3 \end{aligned}
手順4:確かめ
ボールペンが3本のとき、鉛筆は 8 - 3 = 5 本です。代金の合計を確かめます。
\begin{aligned} 80 \times 5 + 110 \times 3 &= 400 + 330 \\ &= 730 \end{aligned}
合計730円となり、問題文の条件に合っています。
したがって、ボールペンの本数は 3本 です。
問題 2 の解答・解説
解答:
生徒の人数は 16人、折り紙の総数は 58枚
解説:
手順1:未知数を決める
「生徒の人数」を x 人と置きます。
手順2:言葉の天秤を作る
配り方を変えても「折り紙の全体の枚数」は変わらないため、折り紙の総数を天秤の左右に乗せます。
「3枚ずつ配ったときの折り紙の総数 = 4枚ずつ配ったときの折り紙の総数」
手順3:数式に翻訳して解く
3枚ずつ配ると10枚余るので、折り紙の総数は 3x + 10 枚です。
4枚ずつ配ると6枚足りないので、折り紙の総数は 4x - 6 枚です。
3x + 10 = 4x - 6
移項して整理します。
\begin{aligned} 3x - 4x &= -6 - 10 \\ -x &= -16 \\ x &= 16 \end{aligned}
手順4:確かめ
生徒の人数が16人のとき、折り紙の枚数を計算します。
左辺(3枚ずつ配ったとき):
\begin{aligned} 3 \times 16 + 10 &= 48 + 10 \\ &= 58 \end{aligned}
右辺(4枚ずつ配ったとき):
\begin{aligned} 4 \times 16 - 6 &= 64 - 6 \\ &= 58 \end{aligned}
どちらで計算しても58枚で一致し、人数も正の整数なので問題に適しています。
したがって、生徒の人数は 16人、折り紙の総数は 58枚 です。
まとめ

文章題って、算数みたいに「引き算して割り算して……」って頭をひねらなくてよかったんだね!
分からないものを x と置いて、問題文の通りに言葉の天秤を作れば、自然と式ができちゃうのがすごく面白かったよ!

そう感じてもらえて何よりじゃ。
方程式の本質は、「複雑な思考の負担を、文字と等号という道具に肩代わりさせる」ことにあるのじゃよ。
頭の中だけで逆算を組み立てる必要はなく、場面をそのまま文字で写し取れば、あとは機械的な計算で自然と答えへ辿り着けるのじゃ。
今回の重要ポイントを整理しておこうかの。
- 算数は逆算、数学は「そのまま書く」:分からない数を x と置いて、問題文のストーリー順に式を並べる。
- 天秤の左右に同じ数量を乗せる:同じひとつの数量(代金、全体の個数など)を、2通りの別の表現で表してイコールで結ぶ。
- 言葉の天秤を作ってから数式にする:いきなり式を書かず、日本語の等式を挟むことで立式のミスを防ぐ。

未知数を置いて等式にする感覚、しっかりつかめたよ!
博士、次はどんなことを学ぶの?

文字を使って式を立て、方程式で答えを求める技が身についたの。
次は、数量が変化していく様子を捉える「比例・反比例」の世界へ進むとするかの。
なぜ y = ax という式になるのか、グラフがなぜ直線や双曲線になるのか、その仕組みをじっくり探究していこうかの。

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