

博士!
確率変数や期待値の計算は分かったんだけど、教科書に「二項分布(にこうぶんぷ)」とか B(n, p) っていう新しい記号が出てきたよ。
なんだか難しそうな名前だけど、これは何なの?

ほう、二項分布じゃな!
名前は少し重々しいかもしれんが、実は「コイン投げ」や「〇✕クイズ」のような身近なゲームの話なんじゃよ。

えっ、コイン投げなの?

順番に紐解いていこう。
二項分布とは何か?「2択ゲームの繰り返し」

まず「二項分布」という言葉の意味から整理してみよう。
二項の意味:成功か失敗かの2通りしかない試行

「二項(にこう)」というのは、結果が「成功」か「失敗」かの2通り(2つの項目)しかないという意味じゃ。
例えば「コインを投げて表が出るか裏が出るか」「シュートが入るか外れるか」「問題に正解するか不正解するか」といった2択の試行のことじゃな。

なるほど! 結果が2パターンしかないから「二項」なんだね!
B(n, p) の意味:n回挑戦して成功率がp

この2択の試行を n 回繰り返すときの確率のルール(分布)を、英語の Binomial(二項)の頭文字をとって B(n, p) と書く。
n は挑戦する回数、 p は1回あたりの成功する確率(成功率)じゃ。

例えば「成功率 \dfrac{1}{2} のコイン投げを10回繰り返す」なら B(10, \dfrac{1}{2}) になるんだね!

その通り! 非常に見事な整理じゃ。
なぜ「反復試行の公式」で確率が計算できるのか

じゃあ、二項分布 B(n, p) で「成功する回数 X が r 回になる確率」はどうやって計算するの?

ここで、数学Aで習った「反復試行(はんぷくしこう)の確率」の知識がそのまま役に立つんじゃよ!
成功する回の選び方(nCr)と確率の掛け算

n 回のうち r 回成功する確率は、次の公式で計算できる。
P(X = r) = {}_n\mathrm{C}_r p^r (1-p)^{n-r}
{}_n\mathrm{C}_r は「n 回のうちどの r 回で成功するか」という場所の選び方、 p^r は r 回成功する確率、 (1-p)^{n-r} は残りの回数失敗する確率じゃな。
具体的計算:コインを10回投げて表が4回出る確率

具体的に計算してみると、どうなるの?

B(10, \dfrac{1}{2}) の二項分布で、表がちょうど4回(X = 4)出る確率を計算してみよう。
P(X = 4) = {}_{10}\mathrm{C}_4 \left(\dfrac{1}{2}\right)^4 \left(\dfrac{1}{2}\right)^6
{}_{10}\mathrm{C}_4 = 210 だから、 210 \times \dfrac{1}{1024} = \dfrac{105}{512}(約 20.5\%)と求まるわけじゃ。
なぜ期待値 np と分散 np(1-p) で「一発計算」できるのか

でも博士、10回も投げたら X が0回から10回まで11通りもあるよね。
期待値 E(X) や分散 V(X) を求めるために、11行もある大きな対応表を作って全部計算しなきゃいけないの?

ふふふ、そこが二項分布の最大の凄さなのじゃ!
実は、二項分布では面倒な表を作らなくても、公式一発で期待値と分散が計算できてしまうんじゃよ。
期待値 E(X) = np:1回の期待値を n 回足すだけ

1回コインを投げたときの表が出る期待値は 1 \times p = p じゃな。
それを n 回繰り返すのだから、期待値は p を n 回足し合わせるだけでよい。
E(X) = np
例えば B(10, \dfrac{1}{2}) なら、 10 \times \dfrac{1}{2} = 5 回と一瞬で出るのじゃ!

えっ! 10 \times \dfrac{1}{2} = 5 だけ!?
「10回投げたら平均5回表が出る」って、当たり前だけど計算がめちゃくちゃ楽だね!
分散 V(X) = np(1-p):独立な試行だから分散も足すだけ

でも博士、1回の試行の分散が p(1-p) になるのはどうしてなの?

前回の「2乗の平均 ひく 平均の2乗」の公式 V(X) = E(X^2) - \{E(X)\}^2 を使えば一目瞭然じゃ!
1回だけ試行するとき、成功(1)と失敗(0)の対応表はこうなるじゃろ?
| X(結果) | 1(成功) | 0(失敗) |
|---|---|---|
| P(確率) | p | 1-p |
- 期待値 E(X) は 1 \times p + 0 \times (1-p) = p じゃ。
- 2乗の期待値 E(X^2) も、1^2=1 と 0^2=0 だから 1^2 \times p + 0^2 \times (1-p) = p になる。
これを前回の公式にあてはめると、
V(X) = p - p^2 = p(1-p)
と、簡単に求まるわけじゃな!

あ! 前回の「2乗の平均引き平均の2乗」公式を使えば、p - p^2 を因数分解して p(1-p) になるんだね!

うむ!
1回の分散が p(1-p) だから、毎回独立した試行を n 回繰り返せば、分散も単純に n 倍足し算するだけでよい。
V(X) = np(1-p)
面倒な対応表を作らなくても、掛け算だけで分散まで出せてしまうのじゃよ。
二項分布を知ると何が得するのか

対応表を苦労して作らなくても、n と p を掛け算するだけで全体の平均やブレ具合がわかるなんて、すごく便利だね!

そうじゃろ!
工場で大量の製品を作ったときの「不良品の個数予測」や、世論調査での「支持率のばらつき」など、社会のあらゆる場面でこの二項分布が使われているんじゃよ。
まとめ

二項分布って「成功・失敗の2択を n 回繰り返すルール」のことで、期待値 E(X) = np と分散 V(X) = np(1-p) の一発公式が使えるすごく便利な仕組みだったんだね!

うむ!
離散的な確率分布の横綱である二項分布をマスターできたな。
次回は、いよいよサイコロのようなコマ切れの値ではなく、身長や時間のような「つながった値(連続型)」を扱う「確率密度関数(かくりつみつどかんすう)」の世界へ進むぞ。
なぜ「ピッタリ170cmになる確率は0」と言われるのか、その謎を解き明かしていこう。
次回は 「確率密度関数ってなに?」について解説していくぞ。



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