

博士!
数学Ⅰで「sin」とか「cos」とか「tan」っていうのが急に出てきたんだけど、これって何なの?
教科書に「\sin \theta = \dfrac{y}{r}」って書いてあるけど、英語の公式みたいでサッパリ分からないよ。

ふぉふぉふぉ、急に見たこともない記号と割り算の式が出てくると身構えてしまうのじゃな。
じゃが、安心してよいぞ。
これらは決して難しい公式などではないのじゃ。

公式じゃないの?

うむ。
身近な場面で言えば「自分の足元から木を見上げる場面」を想像してみるとよいのじゃよ。

自分の足元から木を見上げる場面?
直角三角形を「足元から見上げる視線」で考えてみよう

木を見上げる場面って、どういうこと?

自分自身の足元(地面の点)に立って、高い木のてっぺんを見上げているところをイメージするのじゃ。

うん、地面から木のてっぺんを見る視線ができるね。

そうじゃ。
このとき「自分の足元」と「木の根本」、そして「木のてっぺん」を結ぶと、地面にピッタリくっついた直角三角形ができるのじゃよ。

あ、本当だ!
足元が鋭角で、木の根本が直角になるね。

見事じゃ。
この直角三角形の各部分を、現実のイメージと重ね合わせてみるぞい。

どう重ね合わせるの?

まず、自分が足元から見上げた角度が「\theta(シータ)」じゃ。
そして、自分から木のてっぺんまでの直線(視線の長さ)が「斜辺」じゃよ。

視線が「斜辺」なんだね!
じゃあ、地面の距離と木の高さは?

自分から木の根本までの地面の距離が「底辺」、木の高さがそのまま「高さ」じゃ。

なるほど!
自分から木のてっぺんを見る視線(斜辺)を基準にして、角度\thetaで見上げたときの、木の高さや地面の距離を考えているんだね。

その通りじゃ。
目線(θ)から見てどこが「高さ」でどこが「底辺」か?
向きに惑わされないための「目線(θ)」基準の考え方

でも博士、三角形が横に倒れていたり、逆向きになっていたりしたら、どれが底辺でどれが高さか分からなくなりそうだよ。

非常によい指摘じゃ!
教科書ではよく「基準となる角\thetaを左下、直角を右下に置き直しなさい」と教わるのじゃが、毎回図を描き直すのは大変じゃからのぅ。

うん、向きが変わると混乱しちゃうよ。

だからこそ、「自分が立っている目線(角\theta)から見て、どこにどの辺があるか」という位置関係で捉えるのが一番確実なのじゃよ。
目線の「正面」が高さ、目線の「足元」が底辺

目線から見て、どういう位置関係になるの?

まず、直角に向かい合っている一番長い斜めの辺が、いつでも自分からの「斜辺(視線)」じゃ。

直角の向かい側が、一番長い「斜辺」だね。

そして、自分が立っている目線(角\theta)から見て「正面に向かい合っている辺」が【高さ】じゃよ。
見上げている木の高さそのものじゃな。

目線の正面(向かい側)にある辺が「高さ」なんだ!

そうじゃ。
そして、自分が立っている目線(角\theta)が接している地面の辺が【底辺】(自分から木までの距離)じゃよ。

目線が接している地面が「底辺(距離)」だね!

その通りじゃ!
ちなみに学校の授業などで「アルファベットの筆記体の書き順(s, c, t)」で覚えた者は、その覚え方のままで全く問題ないぞい。
要は「目線\thetaから見て、どの辺を比べているか」が分かればよいのじゃからな。

目線(角\theta)の正面が高さ、接している地面が底辺、直角の向かいが一番長い斜辺って覚えておけば、三角形がどんな向きになっていてもすぐ見抜けるね!
分数はただの「比較」!なぜ 1 を超えないのか?
分数は「どちらがどれくらい大きいか」を比べているだけ

ねえ博士、そもそもなんで三角比って
\dfrac{\text{高さ}}{\text{斜辺}}
みたいに分数(割り算)の形になっているの?

ふぉふぉふぉ、分数の形を見ると難しく感じてしまうのじゃな。じゃが、分数や割り算というのは、本質的には「どちらがどれくらい大きいかの比較(割合)」でしかないのじゃよ。

どちらがどれくらい大きいかの比較?

そうじゃ。
「基準となる辺に対して、もう片方の辺がどれくらいの割合(倍数)の大きさになっているか」を比べているだけなのじゃよ。
一番長い斜辺で割るから sin と cos は絶対に 1 を超えない

あ!
比べているだけって考えると、一つ不思議なことに気づいたよ!

ほう、何に気づいたかの?

直角三角形の中で一番長い辺って、絶対に「斜辺(視線)」だよね?

その通りじゃ!
直角に向かい合う斜辺が、3つの辺の中で間違いなく最も長い。

サイン(\sin)は「斜辺」を基準(分母)にして「高さ」を比べているし、コサイン(\cos)も「斜辺」を基準(分母)にして「底辺」を比べているよね。

うむ、見事な着眼点じゃ!

一番長い「斜辺」で割っているんだから、高さや底辺が斜辺より大きくなるわけがないじゃん!

ふぉふぉふぉ!大正解じゃ!
基準である分母(斜辺)よりも、分子(高さや底辺)が大きくなることは絶対にあり得ん。
だから \sin \theta や \cos \theta の値が 1 を超えることは絶対にないのじゃよ。

なんだ!
「\sin \theta \leqq 1」とか「\cos \theta \leqq 1」って公式として暗記しなくても、一番長い斜辺で比べているんだから 1 を超えないのは当たり前だね!
sin・cos・tanの役割をすっきり整理しよう
視線(斜辺)を基準にした高さ(sin)と距離(cos)

改めて 3 つの記号の役割を整理すると、どうなるの?

自分の視線(斜辺)の長さを「1」としたときに、見上げた角度 \theta によって、木の高さがどれくらいの割合になるかを表したのが \sin \theta じゃ。

視線に対して、高さがどれくらいの割合か、だね。

そして、視線の長さ「1」に対して、自分から木までの地面の距離がどれくらいの割合になるかを表したのが \cos \theta じゃよ。

視線に対して、地面の距離がどれくらいの割合か、だね。
距離と高さの関係を表すタンジェント(tan)

じゃあ、タンジェント(\tan)はどういう役割なの?

\tan \theta は斜辺を使わず、「地面の距離」と「木の高さ」の関係を表しておるのじゃ。

地面の距離と木の高さを比べているんだ!

そうじゃ。
地面の距離に対して、高さがどれくらいの割合(何倍)あるか、つまり「坂道の傾き具合(勾配)」を表しているのがタンジェントなのじゃよ。

あ!サインやコサインは一番長い斜辺で割っているから 1 を超えないけど、タンジェントは地面の距離で割っているから、木がすごく高くなれば 2 でも 10 でも、値に制限なくいくらでも大きくなるね!

ふぉふぉふぉ、素晴らしい洞察じゃ!
タンジェントの値には上限の制限がないのじゃ。
じゃが、一つだけ重大な注意点があるぞい。

注意点?

真上を見上げるように角度が急になって、地面の距離(分母)が 0 になってしまったときじゃ。
数学では「0 で割る」ことは絶対にできんから、距離が 0 になるとタンジェントの値は「存在しない(答えがない)」状態になるのじゃよ。

なるほど!
地面の距離が 0 になったら割り算自体が成立しなくなっちゃうから「答えなし」になるんだね!
特別な角(30°・45°・60°)を割合の目で確かめる

考え方がすっかり分かってきたよ!
実際の角度の計算はどうやるの?

中学で習った「三角定規」の辺の長さの割合を思い出してみるのじゃ。
30度・60度・90度の直角三角形と、45度・45度・90度の直角二等辺三角形じゃな。

覚えているよ!
30度の三角定規は、斜辺が 2、底辺が \sqrt{3}、高さが 1 だったね!

うむ。
斜辺が 2 で、高さが 1 ということは、斜辺に対して高さは「ちょうど半分(\dfrac{1}{2})」ということじゃな。

あ!
だから \sin 30^\circ = \dfrac{1}{2} なんだね!

その通りじゃ。45度や60度についても、目線\thetaから見た長さの割合を確かめてみると次のようになるぞい。
\sin 30^\circ = \dfrac{1}{2}, \quad \cos 30^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}, \quad \tan 30^\circ = \dfrac{1}{\sqrt{3}}
\sin 45^\circ = \dfrac{1}{\sqrt{2}}, \quad \cos 45^\circ = \dfrac{1}{\sqrt{2}}, \quad \tan 45^\circ = 1
\sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}, \quad \cos 60^\circ = \dfrac{1}{2}, \quad \tan 60^\circ = \sqrt{3}

暗記表を覚えるんじゃなくて、辺の長さの割合を比べているだけって思えば、すごく自然に理解できるね!
三角比の基本演習

実際の計算問題にもチャレンジしてみよう!
問題 1 の解答
式:
\sin \theta = \dfrac{3}{5}
\cos \theta = \dfrac{4}{5}
\tan \theta = \dfrac{3}{4}
答え:
\sin \theta = \dfrac{3}{5}、\cos \theta = \dfrac{4}{5}、\tan \theta = \dfrac{3}{4}
解説:
目線\thetaから見た直角三角形において、最も長い斜辺が r = 5、目線が接する地面の底辺が x = 4、目線の正面にある高さが y = 3 です。
斜辺に対する高さの割合より \sin \theta = \dfrac{3}{5}、斜辺に対する底辺の割合より \cos \theta = \dfrac{4}{5}、底辺に対する高さの割合より \tan \theta = \dfrac{3}{4} となります。
斜辺 5 が最も大きいため、\sin \theta も \cos \theta も 1 未満の値になります。
問題 2 の解答
式:
\sin 60^\circ + \cos 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2} + \dfrac{1}{2} = \dfrac{\sqrt{3}+1}{2}
答え:
\dfrac{\sqrt{3}+1}{2}
解説:
60^\circ の直角三角形は、斜辺が 2、底辺が 1、高さが \sqrt{3} です。
各三角比の値は \sin 60^\circ = \dfrac{\sqrt{3}}{2}、\cos 60^\circ = \dfrac{1}{2} です。
これらを足し合わせると、分母が揃っているため \dfrac{\sqrt{3}+1}{2} となります。
まとめと次のステップ

sin, cos, tan って、足元から木を見上げるイメージで「どちらがどれくらい大きいかの比較(割合)」をしているだけなんだね!
目線から見て正面が高さ、接している地面が底辺って押さえれば向きに惑わされないし、斜辺が一番長いから 1 を超えないのもスッキリ納得できたよ!

ふぉふぉふぉ、完璧じゃな。学校で筆記体で習った者も、目線からの位置関係を本質として理解しておけば、どんな図形が出てきても絶対に迷わんぞい。

次回は何を勉強するの?

次は、この 3 つの三角比 \sin、\cos、\tan の間に成り立つ「三角比の相互関係」という重要公式を見ていくとしようかの。



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