

博士!
テレビの視聴率調査とか電球の寿命テストって、世の中にある全てのテレビや電球を調べているわけじゃないよね?
全員を調べなくても全体の傾向がわかるのって、どういう仕組みなの?

ほう、良い疑問じゃな!
全データ(全世帯や製品すべて)を調べる「全数調査(ぜんすうちょうさ)」は、コストや時間の面で不可能なことが多い。
そこで、一部のデータだけを取り出して全体を推測する「標本調査(ひょうほんちょうさ)」という手法を使うのじゃ。

一部を見るだけで全体が推測できるんだね。

そうじゃ。その土台となるのが「母集団(ぼしゅうだん)」と「標本(ひょうほん)」という概念じゃな。
「母集団」と「標本」とは何か?

まず、それぞれの言葉の意味から整理しよう。
母集団:知りたくても全員調べるのが難しい「全体の集まり」

「母集団」とは、調査の対象となるデータ全体の集まりのことじゃ。
例えば「日本全国の高校生の平均身長」を知りたい場合、全高校生が母集団になる。
母集団の平均を「母平均(ぼへいきん) m」、標準偏差を「母標準偏差 \sigma」と呼ぶ。

本当は母平均 m が知りたいけれど、数百万人の高校生全員の身長を測るわけにはいかないね。
標本:全体の性質を推測するために抜き出した「一部のデータ」

そこで、母集団からランダムに無作為抽出(抽出)した一部のデータを「標本」と呼ぶ。
例えば全国からランダムに選んだ n 人の高校生のデータの集合じゃな。
n を「標本の大きさ(サンプルサイズ)」と呼ぶのじゃ。

母集団から抜き出してきた一部のサンプルが「標本」なんだね。
なぜ「標本平均」は確率変数になるのか

標本から求めた平均点や平均身長を「標本平均(ひょうほんへいきん) \bar{X}」って呼ぶんだよね。
理由がわからないんだけど、標本平均って毎回同じ値になるの?

そこが重要な着眼点じゃ!
抜き出すサンプルによって毎回値が変わる

例えば n = 100 人を抜き出して平均を計算しても、次に別の 100人を抜き直したら、少し違う平均値が出るじゃろ?
つまり標本平均 \bar{X} は、どのサンプルが選ばれるかによって値が変わるため、それ自体が「確率変数」なのじゃ。

あ!
標本平均 \bar{X} 自体も値が変動するから、第3回で習った「確率変数」の仲間なんだね!
標本平均の期待値は真の母平均 m に一致する

その通りじゃ!
そして、標本平均 \bar{X} の期待値(平均)を計算すると、真の「母平均 m」に一致する性質(E(\bar{X}) = m)を持っている。
繰り返しサンプルを取り直して平均を集めれば、その中心は真の母平均になるのじゃよ。
標本を増やすと何が起きるのか(標本平均の分布)

サンプル数 n を増やすと、調査の精度はどう変わるの?

抽出するサンプルの数 n を増やすほど、標本平均の散らばりは小さくなっていく。
サンプル数 n が増えると散らばり(分散)が小さくなる

具体的には、標本平均 \bar{X} の分散 V(\bar{X}) は、元の母分散 \sigma^2 を n で割った形になるのじゃ。
V(\bar{X}) = \dfrac{\sigma^2}{n}
標準偏差に直すと \dfrac{\sigma}{\sqrt{n}} じゃな。
サンプル数 n を大きくすればするほど分母が大きくなり、標本平均の散らばりが小さくなって真の母平均 m の近くに集中する。

n を大きくすればするほど、真の平均値からのズレが少なくなっていくんだね!
標本平均の分布 N(m, σ^2/n) から全体を推測する

そして、母集団が正規分布に従っている場合(または n が十分大きい場合)、標本平均 \bar{X} は次の正規分布に従う。
\bar{X} \sim N\left(m, \dfrac{\sigma^2}{n}\right)
この標本平均の分布と、前回・前々回で学んだ「標準正規分布」を組み合わせることで、一部の標本データから真の母平均 m を推測する「統計的推測」ができるようになるのじゃよ。
まとめ

全体調査が難しいときは、母集団から標本を抜き出して「標本平均 \bar{X}」を調べればいいんだね。
標本平均も確率変数で、サンプル数 n を大きくするほどブレが小さくなって真の母平均に近づく仕組みが整理できたよ!


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