

博士、前回の終わりに言っていた「少なくとも」って言葉がずっと気になってるんだ。
「コインを3枚投げるとき、少なくとも1枚は表が出る確率」って問題を見たんだけど……「少なくとも」って言われるだけで、なんだか難しそうで身構えちゃうよ。

ふぉふぉふぉ、すくぞうよ。
数学の問題に出てくる「少なくとも」という言葉に苦手意識を持つ中学生は非常に多いのじゃ。
じゃが、言葉の意味を丁寧にほどいていけば、恐れることは何もないのじゃよ。

本当?
どう考えればいいの?

まずは「真正面から考えることの大変さ」を味わってみるとしようかの!
「少なくとも」の意味と正面から解く苦労
「少なくとも1枚」とはどういう意味か

「少なくとも1枚は表」って、要するにどういうことなのかな?
1枚だけ表が出ればいいの?

そこが最初の分かれ道じゃ。
もし「表が1枚だけ出る」という意味なら、問題文には「1枚だけ表が出る」と書くはずじゃな。
「少なくとも1枚」というのは、「いちばん少なくて1枚」という意味じゃ。
つまり、1枚でもいいし、2枚でもいいし、3枚全部表でも大歓迎ということじゃよ。

あ、そうか!「1枚以上」ってことなんだね!
表が1枚のときもOKだし、2枚のときも、3枚のときもOKなんだ。

その通りじゃ。
逆に言えば、「表が1枚もない(全部裏)」という場合以外は、すべてセーフということじゃな。
正面から樹形図ですべて数え上げる限界

意味は分かったけど……1枚のとき、2枚のとき、3枚のときって、調べる場合が多すぎない!?

うむ、試しにコイン3枚の出方を樹形図で全部書き出してみようかの。
コイン3枚をA, B, Cとすると、表(○)と裏(×)の出方はこうなる。
A ○ ─┬─ B ○ ─┬─ C ○ (○○○)
│ └─ C × (○○×)
└─ B × ─┬─ C ○ (○×○)
└─ C × (○××)
A × ─┬─ B ○ ─┬─ C ○ (×○○)
│ └─ C × (×○×)
└─ B × ─┬─ C ○ (××○)
└─ C × (×××)

全部で 2 \times 2 \times 2 = 8 通りあるね!
この中から「少なくとも1枚は表」を探すと……
3枚表が1通り、2枚表が3通り、1枚表が3通りで、全部で7通りもあるよ!

そうじゃな。
すべての場合の数が8通りで、当てはまるのが7通りじゃから、確率はこうなる。
\dfrac{7}{8}

答えは出たけど、7通りも拾い集めるのはすごく大変だったよ。
もしコインが4枚や5枚になったら、樹形図も長くなるし、絶対に途中で数え落としちゃいそう……。

まさにその通りじゃ!
正面から1つずつ数え上げるのは、手間がかかる上にミスも起きやすい。
そこで登場するのが、「1から引く」という考え方なのじゃよ。
なぜ1から引くのか?「起こらない確率」を使う理由
全体の確率は絶対に「1」になる

1から引く……?
なんで引き算で確率が求まるの?

第1回で学んだ大原則を思い出してみるのじゃ。
確率というものは、絶対に起こらない 0 から、絶対に起こる 1 の間に必ず収まるのじゃったな。

あ!「全体の確率は絶対に1」ってやつだね!

その通りじゃ。
ある事柄について、「それが起こる確率」と「それが起こらない確率」の2つを合わせると、すべての可能性を網羅するから、足して必ず 1 になるのじゃよ。

なるほど!
「起こる」か「起こらない」かのどっちかしかないもんね。合わせたら全体(1)になるのは当たり前だ!
起きない側だけを引く理由

では、今回の「少なくとも1枚は表が出る」の反対は何かの?

えーっと、「1枚も表が出ない」……あっ、「3枚とも全部裏が出る」ってこと!?

見事じゃ!
「表が1枚、2枚、3枚」という仲間は7通りもあったが、その反対である「全部裏(×××)」は、たったの1通りしかないのじゃよ。

たったの1通り!
全部で8通りあるうちの1通りだから、3枚とも裏が出る確率は \dfrac{1}{8} だね。

そうじゃな。
全体である 1 から、仲間はずれの \dfrac{1}{8} を引いてやれば、残りの「少なくとも1枚は表が出る確率」が一瞬で計算できるのじゃ。
\begin{aligned} 1 - \dfrac{1}{8} &= \dfrac{8}{8} - \dfrac{1}{8} \\ &= \dfrac{7}{8} \end{aligned}

うわあ、すごい!
樹形図から7通りを必死に探さなくても、たった1つの「全部裏」を引くだけで同じ答えが出たよ!

ふぉふぉふぉ。
高校数学では、この「起こらない側の事柄」のことを「余事象」と呼ぶのじゃが、考え方そのものは非常にシンプルじゃろう?
「当てはまる場合が多すぎて数えるのが大変なときは、起こらない側を1から引く」。
これが「少なくとも」という言葉を見たときの決定的な解き方なのじゃ。
演習問題
問題 1 の解答・解説
【解答】
\dfrac{7}{8}
【解説】
3枚の硬貨の表裏の出方は、全部で次の 8 通りあり、どれが出ることも同様に確からしいと考えられます。
2 \times 2 \times 2 = 8
「少なくとも1枚は裏が出る」の反対は、「3枚とも表が出る」ことです。
3枚とも表が出る出方は (表, 表, 表) の 1 通りなので、その確率は次のようになります。
\dfrac{1}{8}
したがって、求める確率は全体である 1 からこの確率を引いて計算できます。
\begin{aligned} 1 - \dfrac{1}{8} &= \dfrac{8}{8} - \dfrac{1}{8} \\ &= \dfrac{7}{8} \end{aligned}
よって、少なくとも1枚は裏が出る確率は \dfrac{7}{8} です。
問題 2 の解答・解説
【解答】
【解説】
大小2個のサイコロの目の出方は全部で 36 通りあり、どれが出ることも同様に確からしいと考えられます。
「少なくとも1個は偶数の目が出る」の反対は、「2個とも奇数の目が出る」ことです。
大小2個のサイコロの出方を表に整理し、2個とも奇数になるマス目に ○ を付けると、次のようになります。
| 大\小 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | ○ | ○ | ○ | |||
| 2 | ||||||
| 3 | ○ | ○ | ○ | |||
| 4 | ||||||
| 5 | ○ | ○ | ○ | |||
| 6 |
表より、2個とも奇数の目が出る組み合わせは次の 9 通りです。
(1,\ 1),\ (1,\ 3),\ (1,\ 5),\ (3,\ 1),\ (3,\ 3),\ (3,\ 5),\ (5,\ 1),\ (5,\ 3),\ (5,\ 5)2個とも奇数の目が出る確率は次のようになります。
\begin{aligned} \dfrac{9}{36} &= \dfrac{1}{4} \end{aligned}したがって、求める確率は全体である 1 からこの確率を引いて求められます。
\begin{aligned} 1 - \dfrac{1}{4} &= \dfrac{4}{4} - \dfrac{1}{4} \ &= \dfrac{3}{4} \end{aligned}よって、少なくとも1個は偶数の目が出る確率は \dfrac{3}{4} です。
まとめ

「少なくとも」が出てきたら、全部を数えようとしないで「起こらない場合を1から引く」と考えればいいんだね!

その通りじゃ。「少なくとも」という言葉は、裏を返せば「当てはまる場合がたくさんある」という合図じゃからの。反対側のたった1つを引くほうが、計算も圧倒的に速く、間違いも防げるのじゃ。

コインの表裏、サイコロ2個の表、袋から玉を取り出すときの区別、そして今回の1から引く考え方……中学校の確率って、仕組みが分かるとすごく面白いね!

ふぉふぉふぉ、よくぞここまで学び抜いたのう!
「同様に確からしい」という土台さえ忘れなければ、高校数学の確率に進んでも決して迷うことはないはずじゃよ。

うん!中学数学の確率はもう怖くないよ。博士、4回にわたって教えてくれて本当にありがとう!

うむ、おぬしのこれからの学びをずっと応援しておるのじゃよ。


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