
博士、乗法公式の2乗と和と差の積、あれから練習してかなり自信がついたよ!

うむ、素晴らしいのう。
基本の公式が身体に馴染めば、中学の計算はぐっと楽になるはずじゃ。

うん!でも、問題集の最後のページを見たら、文字が3つも4つも並んだ長い式が出てきて……
どこから手をつけたらいいのか途方に暮れちゃったよ。

うむ、高校入試や定期テストの応用問題じゃな。
一見すると難解に見えるが、実は「見方を変える工夫」を1つ挟むだけで、すべて前回までに学んだ公式に化けるのじゃよ。

えっ、公式に化けるの!?
どうやって化けさせるのか、すごく気になるよ!

その鍵が「置き換え」と「カッコの安全な外し方」じゃ。
今日は、複雑な式をスッキリ解き明かす極意を伝授するとしようかの。
なぜ同じ部分をひと文字に置き換えるのか
複雑な多項式を基本の乗法公式に落とし込む

博士、例えばこんな問題だよ。
(x+y+3)(x+y-5)
カッコの中に項が3つもあるよ!
これって、前のカッコの3つから後ろの3つへ、9回も全部掛け算しなきゃいけないの?

力任せに9回掛けても解けなくはないが、計算ミスをする確率が跳ね上がってしまうのじゃ。
式をじっくり眺めてみるのじゃ。前と後ろのカッコに、何か「共通するもの」はおらんかの?

えーっと……あ!どっちのカッコにも x+y が入ってる!

その通りじゃ!
その x+y というカタマリを、ひとつの大きな文字 M と置いてみるのじゃ。

x+y = M と置くんだね。
すると式はどうなるの?

こう書き直せるのじゃよ。
(M+3)(M-5)

わあっ!ステップ1で習った、いちばん最初の乗法公式 (x+a)(x+b) そのものだ!
これなら暗算でも展開できるよ!
「足して真ん中、掛けて後ろ」だから……
真ん中は 3 + (-5) = -2 で、後ろは 3 \times (-5) = -15 だね!

見事じゃ!
M^2 - 2M - 15
複雑に見えた9回の掛け算が、文字をひとつ置くだけで一瞬にして見慣れた基本形に早変わりしたじゃろ?
置き換えた文字をもとに戻すときの注意点

置き換えってすごく便利だね!
……あ、でもこれ、答えじゃないよね?M は勝手にぼくが置いた文字だもん。

うむ、鋭いぞい。
M をもとの x+y に戻してやる「復元」の作業が必要じゃな。
代入するときは、必ずカッコをつけて代入するのじゃ。
(x+y)^2 - 2(x+y) - 15


その通りじゃ。
(x+y)^2 = x^2 + 2xy + y^2 じゃな。
そして後ろの -2(x+y) は、中2で習った普通の分配法則でカッコを外せばよい。

やってみるよ!
\begin{aligned} &(x+y)^2 - 2(x+y) - 15 \\ &= x^2 + 2xy + y^2 - 2x - 2y - 15 \end{aligned}
できた!
同類項もないから、これで終わりだね!

正解じゃ。
複雑に見える応用問題も、分解してみれば「基本公式」と「2乗の公式」の組み合わせに過ぎないのじゃよ。
マイナスがついた展開で失点する理由
マイナスを残したままカッコの中で展開する

置き換えはすごくよく分かったよ!
でも、テストでぼくが一番よく落とし穴にはまるのが、こういう問題なんだ……。
(x+3)(x-3) - (x-2)^2
引き算が真ん中に入っている式だよ。

ほぅ、実に多くの生徒がつまずく定番の難所じゃな。
すくぞうよ、どこで引っかかるのじゃ?

前の (x+3)(x-3) は和と差の積だから x^2 - 9 で簡単なんだけど……
後ろの引き算をするときに、符号がプラスだったかマイナスだったか、頭がごちゃごちゃになっちゃうんだ。

それは「展開」と「マイナスの分配」を頭の中で同時にやろうとしておるからじゃ。
ふたつの作業を一気にやろうとすると、注意力が散漫になってしまうのじゃよ。
安全に解くための鉄則は、「引き算のマイナスを外に残したまま、後ろの式を中カッコの中で展開する」ことなのじゃ。

マイナスを外に残して、中カッコ?

そうじゃ。途中の式をこう書くのじゃよ。
\begin{aligned} (x+3)(x-3) - (x-2)^2 &= (x^2 - 9) - \{x^2 - 4x + 4\} \end{aligned}

ああっ!
後ろの展開全体を、中カッコでしっかりガードして守ってあげるんだね!
符号の分配を一気にしてしまうミスの防ぎ方

その通りじゃ。
まず後ろの (x-2)^2 だけを公式通りに展開して中カッコの中に収める。
そして次の行で、マイナスを中のすべての項に順番に掛けてカッコを外すのじゃ。

マイナスを配るから……
x^2 は -x^2 になって、
-4x は +4x になって、
+4 は -4 に符号がひっくり返るんだね!

うむ、やってみるのじゃ。

\begin{aligned} (x^2 - 9) - \{x^2 - 4x + 4\} &= x^2 - 9 - x^2 + 4x - 4 \\ &= 4x - 13 \end{aligned}
x^2 も消えて、すごくスッキリした答えになった!

見事じゃ!
途中式をたった1行惜しんで頭の中で一気に暗算しようとすると、最後の +4 の符号を変え忘れて大失点してしまう。
「マイナスを残して中カッコで受ける」。
この1行を書く勇気こそが、正確に解き切るための秘訣なのじゃよ。
3つの項や並び替えの工夫で解く展開
順番を並び替えて和と差の積をつくる工夫

博士、もうひとつ意地悪な問題があるよ!
(x+y-2)(x-y-2)
これ、どっちのカッコにも x と y と 2 が入ってるけど、符号がバラバラだよ。
前のカッコは +y で後ろは -y だから、置き換えができないよ……!

良いところに気づいたの。
じゃが、諦めるのはまだ早いのじゃ。
符号が「完全に同じもの」と「符号が違うもの」に仕分けしてみるのじゃ。

えーっと……
x はどっちもプラス。
-2 もどっちもマイナス。
でも y だけは、プラスとマイナスで符号が違ってる!

その通りじゃ!
足し算や引き算は順番を入れ替えても値は変わらんじゃろ?
符号が同じ x-2 を前に寄せて並び替えてみるのじゃ。

並び替えると……
前は (x-2) + y
後ろは (x-2) - y
……あっ!!
x-2 が共通になってる!

うむ!そして全体を見ると、どんな形になっておるかの?

「ナントカ + y」と「ナントカ ー y」になってる!
ステップ2の「和と差の積」だ!

その通りじゃ!
x-2 = M と置けば、(M+y)(M-y) = M^2 - y^2 という、あの真ん中が消える公式に持ち込めるのじゃよ。

並び替えるだけで、あんなに難しそうだった式が和と差の積に変身しちゃうんだね!

うむ、純粋な観察と工夫の力じゃよ。
共通部分をつくり出すマイナスの括り出し

並び替えの技は分かったけど、もっと複雑なやつもあるの?

うむ、例えばこんな式じゃな。
(a+b-c)(a-b+c)

うわあ……a だけはどっちもプラスだけど、後ろの b と c はどっちも符号が反対になってるよ。
前は +b-c なのに、後ろは -b+c だよ。

ここで役立つのが、中2で習った「マイナスの括り出し」じゃ。
後ろのカッコの -b+c から、マイナスをカッコの外に括り出してみるのじゃ。

マイナスでくくると……
-b+c = -(b-c) になる!

そうじゃ!
すると、2つのカッコはどうなるかの?

前は a + (b-c)
後ろは a - (b-c)
うわあっ!どっちにも b-c が現れた!
しかも全体が a と b-c の「和と差の積」になってる!

その通りじゃ。
b-c = M と置けば、(a+M)(a-M) = a^2 - M^2 と一発で計算できる。
一見バラバラに見えても、マイナスを1つくくり出すだけで、隠れていた共通のカタマリが姿を現すのじゃよ。
演習問題
式の展開の応用と工夫について確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
【解答】
(1) x^2 + 2xy + y^2 - 2x - 2y - 8
(2) a^2 - 2ab + b^2 + 6a - 6b + 9
【解説】
共通部分を M と置く置き換えの展開を用います。
(1)
x+y = M と置くと、与式は (M+2)(M-4) となります。
\begin{aligned} (M+2)(M-4) &= M^2 - 2M - 8 \\ &= (x+y)^2 - 2(x+y) - 8 \\ &= x^2 + 2xy + y^2 - 2x - 2y - 8 \end{aligned}
(2)
a-b = M と置くと、与式は (M+3)^2 となります。
\begin{aligned} (M+3)^2 &= M^2 + 6M + 9 \\ &= (a-b)^2 + 6(a-b) + 9 \\ &= a^2 - 2ab + b^2 + 6a - 6b + 9 \end{aligned}
問題 2 の解答・解説
【解答】
(1) 2x - 13
(2) x^2 - 2x + 1 - 4y^2
【解説】
(1)
後半の展開をマイナスを残したまま中カッコで保護して計算します。
\begin{aligned} (x+4)(x-4) - (x-3)(x+1) &= (x^2 - 16) - \{x^2 - 2x - 3\} \\ &= x^2 - 16 - x^2 + 2x + 3 \\ &= 2x - 13 \end{aligned}
(2)
符号が一致している項を並び替えて和と差の積をつくります。
x-1 = M と置きます。
\begin{aligned} \{(x-1) + 2y\}\{(x-1) - 2y\} &= (M + 2y)(M - 2y) \\ &= M^2 - 4y^2 \\ &= (x-1)^2 - 4y^2 \\ &= x^2 - 2x + 1 - 4y^2 \end{aligned}
まとめ

どんなに複雑で長い式でも、カタマリを文字に置き換えたり、並び替えたりするだけで、全部これまでの乗法公式で解けちゃうんだね!

うむ。高校数学に進んでも、「複雑なカタマリをひとつの文字とみなす」という発想は実用的な考え方のひとつじゃ。

カッコの前にマイナスがある計算も、中カッコでしっかりガードしてから符号を変えれば絶対にミスしないよ!

頼もしいのう。これで「式の展開」の全3ステップをすべて制覇したぞい。展開の仕組みと公式の原理をマスターした今なら、次に待ち受ける「因数分解」も驚くほどスムーズに理解できるはずじゃ。

因数分解!展開の逆の計算だよね。
次もがんばるよ、博士!

うむ、その意気じゃ。次回も楽しみに待っておるのじゃよ。

コメント