

博士!
加法定理を使って2倍角や半角の計算ができるようになったんだけど、また困った問題が出てきたんだ。

ふむ、どんな問題じゃな?
三角関数の世界はひとつ壁を越えると、また新しい景色が見えてくるものじゃ。

\sin \theta + \cos \theta = 1 とか、y = \sin \theta + \sqrt{3}\cos \theta の最大値を求めろっていう問題だよ。\sin と \cos が両方混ざっていて、どう扱えばいいのかさっぱり分からないんだ。

なるほどじゃ。
種類が違う波が2つ混ざっておると、全体がどんな高さになるのか、どこで0になるのかが見えづらいのじゃな。
じゃが、実はこの2つの波は、たった1つの \sin の波に合体させることができるのじゃよ。

えっ!
\sin と \cos を合体させて1つの \sin にまとめちゃうの?
そんな魔法みたいなことができるの?

魔法ではないぞ。
前回学んだ加法定理を、ほんの少し逆から眺めるだけじゃ。
今回は「三角関数の合成」の仕組みと、なぜそれができるのかの原理を一緒に紐解いていこうかの。
sinとcosが混ざると最大最小や方程式が解けない問題

ねえ博士、そもそもなんで \sin と \cos を1つにまとめる必要があるの?それぞれの値の変化を別々に考えちゃダメなのかな?

良い疑問じゃな。
例えば y = \sin \theta + \cos \theta という式を考えてみよう。
\theta が増えるとき、\sin \theta が大きくなっても、\cos \theta は小さくなったりするじゃろう?

あ、確かに!
\theta = 0 から \dfrac{\pi}{2} まで変化するとき、\sin は 0 から 1 に増えるけど、\cos は 1 から 0 に減っちゃうね。片方が増えて片方が減るから、足し合わせた全体がいつ一番大きくなるのか分かりにくいんだ!

その通りじゃ!
変化する変数が2つ混ざっていると、最大値や最小値を求めるのも、方程式を解くのも難しくなってしまう。
じゃが、もしこれが y = r \sin(\theta + \alpha) のように「1つの \sin」の形に変形できたらどうじゃ?

それなら \sin の波の振幅(高さ)が r になって、最大値は r、最小値は -r って一目で分かるね!

その通りじゃ。
だからこそ、\sin と \cos の足し算を1つの \sin に変形する「合成」という技術が必要になるのじゃよ。
三角関数の合成とは?加法定理を逆に使うカラクリ
加法定理の公式を逆から眺めてみよう

でも博士、どうやって a \sin \theta + b \cos \theta を1つの \sin に合体させるの?

加法定理の公式を覚えているかの?\sin の加法定理はこうじゃったな。
\sin(\theta + \alpha) = \sin \theta \cos \alpha + \cos \theta \sin \alpha

「咲いたコスモス、コスモス咲いた」の公式だね!

そうじゃ。この右辺をよく見てほしい。
(\cos \alpha) \sin \theta + (\sin \alpha) \cos \theta
という形をしておるじゃろ?

あっ!\sin \theta の前に何か数字(\cos \alpha)が掛かっていて、\cos \theta の前に何か数字(\sin \alpha)が掛かっている!

気づいたの!つまり、私たちが解きたい a \sin \theta + b \cos \theta という式の係数 a と b を、それぞれ a = r \cos \alpha、b = r \sin \alpha と表すことができれば、加法定理を逆向きに使って r \sin(\theta + \alpha) にまとめられるのじゃ!
座標平面の点(a, b)から合成公式を作る手順

なるほど!
でも a = r \cos \alpha と b = r \sin \alpha になるような r と \alpha って、どうやって見つければいいの?

ここで登場するのが、座標平面じゃ。
点 P(a, b) を座標平面上にとってみよう。
原点 O(0, 0) と点 P を結ぶ線分の長さ(距離)を r とし、x 軸の正の向きとなす角を \alpha とすると、a と b はどう表せるかの?

直角三角形を考えると、底辺が a = r \cos \alpha で、高さが b = r \sin \alpha だね!
三平方の定理を使うと、斜辺の長さは r = \sqrt{a^2 + b^2} になる!

見事じゃ!つまり、a \sin \theta + b \cos \theta を合成する手順は次のようになるのじゃ。
\begin{aligned} a \sin \theta + b \cos \theta &= \sqrt{a^2 + b^2} \left( \dfrac{a}{\sqrt{a^2 + b^2}} \sin \theta + \dfrac{b}{\sqrt{a^2 + b^2}} \cos \theta \right) \\ &= r (\sin \theta \cos \alpha + \cos \theta \sin \alpha) \\ &= r \sin(\theta + \alpha) \end{aligned}

\sin の係数 a を x 座標、\cos の係数 b を y 座標にして点 P(a, b) をとれば、長さ r と角度 \alpha が視覚的に一発で分かるんだね!

その通りじゃ!
丸暗記するのではなく、「\sin の係数を x 座標、\cos の係数を y 座標にとる」という作図の意味を押さえておけば、合成公式を忘れてもいつでも作れるのじゃよ。
合成を使って方程式・不等式・最大最小を解く手順
角度の範囲の変化に注意する方程式・不等式

合成の原理は分かったよ!
実際に方程式を解くときには、どんな点に注意すればいいの?

例として、0 \leqq \theta < 2\pi のとき、\sin \theta + \sqrt{3}\cos \theta = 1 という方程式を解いてみよう。
まず、左辺を合成するとどうなるかの?

\sin の係数が 1、\cos の係数が \sqrt{3} だから、点 P(1, \sqrt{3}) をとるね。
原点からの距離は r = \sqrt{1^2 + (\sqrt{3})^2} = \sqrt{4} = 2。
角度は \cos \alpha = \dfrac{1}{2}、\sin \alpha = \dfrac{\sqrt{3}}{2} だから \alpha = \dfrac{\pi}{3} だ!
だから合成すると 2 \sin\left(\theta + \dfrac{\pi}{3}\right) = 1 になるね!

素晴らしいぞ!
両辺を 2 で割ると、\sin\left(\theta + \dfrac{\pi}{3}\right) = \dfrac{1}{2} となるな。
ここで一番重要な落とし穴があるのじゃ。\theta の範囲が 0 \leqq \theta < 2\pi のとき、カッコの中身である \theta + \dfrac{\pi}{3} の範囲はどうなるかの?

あっ!全体に \dfrac{\pi}{3} を足すから、\dfrac{\pi}{3} \leqq \theta + \dfrac{\pi}{3} < 2\pi + \dfrac{\pi}{3} にズレるんだ!

その通りじゃ!
この範囲の中で \sin の値が \dfrac{1}{2} になる角度を探すと、\theta + \dfrac{\pi}{3} = \dfrac{5}{6}\pi, \ \dfrac{13}{6}\pi となるのじゃ。
両辺から \dfrac{\pi}{3} を引けば、\theta = \dfrac{\pi}{2}, \ \dfrac{11}{6}\pi と求まるぞ。
合成公式を使って波の振幅と最大最小を求める

なるほど!
角の範囲のずらしに気をつければいいね。
じゃあ、最大値や最小値を求めるときはどうなるの?

y = \sin \theta - \cos \theta (0 \leqq \theta \leqq \pi)の最大値と最小値を考えてみよう。
\sin の係数が 1、\cos の係数が -1 じゃから、点 P(1, -1) をとる。
距離は r = \sqrt{1^2 + (-1)^2} = \sqrt{2}、角度は \alpha = -\dfrac{\pi}{4} じゃな。

だから合成すると y = \sqrt{2}\sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{4}\right) になるね!

そうじゃ。\theta の範囲は 0 \leqq \theta \leqq \pi だから、角 \theta - \dfrac{\pi}{4} の範囲は -\dfrac{\pi}{4} \leqq \theta - \dfrac{\pi}{4} \leqq \dfrac{3}{4}\pi となるのじゃ。
単位円でこの範囲を動くとき、\sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{4}\right) はどんな値の範囲をとるかの?

-\dfrac{\pi}{4} のとき -\dfrac{1}{\sqrt{2}} で、途中の \dfrac{\pi}{2} でてっぺんの 1 を通って、\dfrac{3}{4}\pi のとき \dfrac{1}{\sqrt{2}} になるね!
だから \sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{4}\right) のとり得る値の範囲は -\dfrac{1}{\sqrt{2}} \leqq \sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{4}\right) \leqq 1 だ!

見事じゃ!
全体に \sqrt{2} を掛けると、-1 \leqq y \leqq \sqrt{2} となる。
したがって、最大値は \sqrt{2}(\theta = \dfrac{3}{4}\pi のとき)、最小値は -1(\theta = 0 のとき)と正確に求められるのじゃよ。
演習問題と解説
点 P(\sqrt{3}, -1) をとると、原点からの距離は r = \sqrt{(\sqrt{3})^2 + (-1)^2} = \sqrt{4} = 2、偏角は -\dfrac{\pi}{6} となる。
したがって、左辺を合成すると、
2\sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{6}\right) = \sqrt{2}
両辺を 2 で割ると、
\sin\left(\theta - \dfrac{\pi}{6}\right) = \dfrac{1}{\sqrt{2}}
ここで、0 \leqq \theta < 2\pi より、角の範囲は
-\dfrac{\pi}{6} \leqq \theta - \dfrac{\pi}{6} < \dfrac{11}{6}\pi
この範囲において \sin の値が \dfrac{1}{\sqrt{2}} となるのは、
\theta - \dfrac{\pi}{6} = \dfrac{\pi}{4}, \ \dfrac{3}{4}\pi
各辺に \dfrac{\pi}{6} を加えて整理すると、
\theta = \dfrac{5}{12}\pi, \ \dfrac{11}{12}\pi
問題 2 の解答・解説
点 P(1, 1) をとると、原点からの距離は r = \sqrt{1^2 + 1^2} = \sqrt{2}、偏角は \dfrac{\pi}{4} となる。
したがって、右辺を合成すると、
y = \sqrt{2}\sin\left(\theta + \dfrac{\pi}{4}\right)
ここで、0 \leqq \theta \leqq \pi より、角の範囲は
\dfrac{\pi}{4} \leqq \theta + \dfrac{\pi}{4} \leqq \dfrac{5}{4}\pi
この範囲において、\sin\left(\theta + \dfrac{\pi}{4}\right) は、
\theta + \dfrac{\pi}{4} = \dfrac{\pi}{2}(すなわち \theta = \dfrac{\pi}{4})のとき最大値 1、
\theta + \dfrac{\pi}{4} = \dfrac{5}{4}\pi(すなわち \theta = \pi)のとき最小値 -\dfrac{1}{\sqrt{2}} をとる。
したがって、
\theta = \dfrac{\pi}{4} のとき最大値 \sqrt{2} \times 1 = \sqrt{2}
\theta = \pi のとき最小値 \sqrt{2} \times \left(-\dfrac{1}{\sqrt{2}}\right) = -1
まとめと三角関数シリーズの振り返り

博士、ありがとう!\sin と \cos の合成って、加法定理を逆から使って点 P(a, b) を図示するだけで、視認的に波を合体させられるんだね。

うむ、見事な理解じゃ。
\sin と \cos が混ざった複雑な式も、合成によって「振幅 r と位相のズレ \alpha を持った1つの \sin の波」に単純化できる。
これが三角関数の合成の本質じゃな。

直角三角形の三角比から始まって、単位円での拡張、正弦定理や余弦定理、弧度法とグラフの波、加法定理、そしてこの合成まで全10ステップを完走したんだね!



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