
博士!
反復試行の確率に出てくる _n \mathrm{C}_r p^r (1-p)^{n-r} っていう公式について教えてほしいんだ。
1回の確率に通り数の C を掛ける理由がよく分からなくて。
通り数を掛けたら、確率がすごく大きくなっちゃわないの?

ほぅ、良い疑問じゃな。
多くの人が公式として丸暗記して通り過ぎるポイントじゃ。
実は C は確率を大きくするために乗算しているわけではなく、同じ確率になるパターンを足し合わせているのじゃよ。

同じ確率のパターンを足している…?
どういうこと?

順番に紐解いていこうかの。
まずは、そもそも反復試行とはどういう実験なのか、基本となる条件から確認しておこう。
反復試行の前提条件「毎回同じ確率で繰り返す」

反復試行って、同じことを何回も繰り返す実験のことだよね?

その通りじゃ。
じゃが、単に繰り返すだけでは反復試行とは呼ばんのじゃ。
重要なのは、何回目であっても『毎回起こる確率が変わらない』ということじゃな。

毎回確率が変わらない…
サイコロを振ったり、コインを投げたりする感じかな?

そうじゃ。
1回目に何が出ようと、2回目の確率は変化しない。
これを数学では『独立な試行』と呼ぶのじゃ。
逆にくじ引きで『引いたくじを元に戻さない場合』は、残りの枚数が減って確率が変わるから、反復試行にはならないのじゃよ。

なるほど!
毎回リセットされて、同じ確率でチャレンジできるのが反復試行なんだね。

うむ。
この前提を理解したうえで、なぜ C が登場するのかを見ていくとしよう。
なぜ 1 回の確率に C(組合せ)を掛けるのか?

ここからが本題だね。
例えばコインを3回投げて、表が2回出る確率を考えたいんだけど。

良い例じゃな。
3回投げて表が2回出る確率を、段階を追って解き明かしていこうかの。
1つの具体的な並び順の確率を求める

まずは『表・表・裏』という特定の順番で出る確率を考えてみようかの。
コイン1回で表が出る確率は \dfrac{1}{2} 、裏が出る確率は 1 - \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{2} じゃな。

うん。
表、表、裏の順に出るから、確率は掛け算して \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{2} \times \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{8} になるね。

その通りじゃ。
一般化すると、成功する確率が p 、失敗する確率が 1-p のとき、特定の一つの並び順の確率は p^r (1-p)^{n-r} と表せるのじゃ。
同じ確率になる並び方のパターン数を数える

でも、3回投げて表が2回出るのって、『表・表・裏』だけじゃないよね?

よく気がついたの。
実際に書き出してみるかの。

『表・表・裏』のほかに、『表・裏・表』と『裏・表・表』があるから、全部で3パターンあるよ!

うむ。
そして、どのパターンの確率もすべて \dfrac{1}{8} になるのじゃ。
この3パターンという数は、3回の試行枠の中から『表が出る2回の場所を選ぶ』ことと同じじゃな。

あ!3つの場所から2つを選ぶから、_3 \mathrm{C}_2 = 3 通りって計算できるんだ!
足し算を掛け算にまとめる

ここが最大のポイントじゃ。
3つのパターンは同時に起こることはないからのぅ。

同時に起きないから、確率を足し算すればいいんだね。
\dfrac{1}{8} + \dfrac{1}{8} + \dfrac{1}{8} = \dfrac{3}{8} になる!

その通りじゃ。
\dfrac{1}{8} を3回足すということは、\dfrac{1}{8} \times 3 と同じじゃろう?
つまり、\times _3 \mathrm{C}_2 というのは通り数を掛けて確率を大きくしているのではなく、『同じ確率になる _3 \mathrm{C}_2 個のパターンを足し合わせている』ということなのじゃ。

なるほど!
『同じ確率の並びが何個あるか』を求めて、足し算を掛け算にまとめていただけなんだね!
すごくスッキリしたよ!
なぜ P(順列)ではなく C(組合せ)なのか?

ねえ博士、もう一つ気になるところがあるんだけど。
出る順番が関係しているなら、P(順列)を使っても良さそうな気がするのに、なんで C(組合せ)を使うの?

ほぅ、鋭い視点じゃな。
実は、何を並べているかに着目すると疑問が解けるぞい。

何を並べているか?

もし『第1回、第2回、第3回』という3つの試行枠に、2個の『表』を配置すると考えるのじゃ。
表同士は区別がつかないからのぅ。
『どの回で表を出すか』という場所を選ぶ操作になるのじゃよ。

あ、表Aと表Bみたいに区別するわけじゃないから、並べ替える必要がなくて、場所を選ぶだけでいいんだね!

そうじゃ。
3つの枠から表を入れる2つの枠を選ぶだけだから _n \mathrm{C}_r になるのじゃよ。
「〇回目でゲーム終了」問題の注意点

反復試行の公式が使えるようになれば、どんな問題もバッチリかな?

基本はバッチリじゃが、一つだけ多くの人がつまずく落とし穴があるぞい。
例えば『5回勝負で先に3勝した方が勝ち』というゲームで、5回目にA君が優勝する確率を求める問題じゃ。

5回中3勝すればいいから、_5 \mathrm{C}_3 p^3 (1-p)^2 って公式に当てはめればいいんじゃないの?

そこが罠なのじゃ。
もし5回中3勝の計算をしてしまうと、『3回目までに3連勝してゲームが終わっているパターン』まで含まれてしまうのじゃよ。

あ!
5回目に優勝するってことは、5回目は絶対に勝ってゲームが終わらなきゃいけないんだ!

その通りじゃ。
だから『4回目までに2勝しておき、5回目に絶対に勝つ』という構造に分けて考える必要があるのじゃよ。

なるほど!
『最後の回の結果が固定されている』ときは、公式をそのまま使っちゃダメなんだね。

うむ。
原理を理解していれば、こうした条件の変化にも惑わされずに対応できるぞい。
演習問題
問題 1 の解答
式:_4 \mathrm{C}_2 \times \left(\dfrac{1}{6}\right)^2 \times \left(\dfrac{5}{6}\right)^2 = 6 \times \dfrac{1}{36} \times \dfrac{25}{36} = \dfrac{25}{216}
答え:\dfrac{25}{216}
解説:1 の目が出る確率は \dfrac{1}{6} 、1 以外の目が出る確率は \dfrac{5}{6} である。4 回のうち 1 の目が 2 回出る並び方は _4 \mathrm{C}_2 = 6 通りあるため、これらを掛け合わせて計算する。
問題 2 の解答
式:_4 \mathrm{C}_2 \times \left(\dfrac{1}{3}\right)^2 \times \left(\dfrac{2}{3}\right)^2 \times \dfrac{1}{3} = 6 \times \dfrac{1}{9} \times \dfrac{4}{9} \times \dfrac{1}{3} = \dfrac{8}{81}
答え:\dfrac{8}{81}
解説:5 回目にA君の優勝が決まるためには、「4 回目までにA君が 2 勝 2 敗となり、5 回目にA君が勝つ」必要がある。4 回目までに 2 勝する確率は _4 \mathrm{C}_2 \left(\dfrac{1}{3}\right)^2 \left(\dfrac{2}{3}\right)^2 であり、これに 5 回目に勝つ確率 \dfrac{1}{3} を掛けて求める。
まとめ

公式の _n \mathrm{C}_r は、確率を大きくするためじゃなくて『同じ確率のパターンを足し合わせるため』にあったんだね!

うむ。
公式を丸暗記するのではなく『1パターンの確率 × パターン数』という原理を理解しておけば、条件が変わった問題でも迷わずに解けるようになるぞい。

ありがとう博士!反復試行の仕組みがよく分かったよ!

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