

博士、前回の挟み撃ちのおかげで、ルートがどれくらいの大きさなのか自分の手で確かめられるようになったよ!

それは素晴らしいことじゃ。
数直線上でルートの居場所が掴めたのは、大きな前進じゃからのぅ。

それでね、次にルートの計算をしようと思ったんだけど、ふと気になったんだ。
ルート同士の計算ってどうやるのかな?

ほぅ、計算のルールに目が向いたのじゃな。
どんな計算を想像したのかの?

たとえば \sqrt{2} + \sqrt{3} は \sqrt{5} になるのかな?
それとも \sqrt{2} \times \sqrt{3} = \sqrt{6} になるのかな?

実に核心を突く良い問いじゃな。
実はの、足し算の \sqrt{2} + \sqrt{3} は \sqrt{5} にはならんのじゃ。
じゃが、掛け算の \sqrt{2} \times \sqrt{3} = \sqrt{6} は堂々と成り立つのじゃよ。

えっ!足し算は合体できないのに、掛け算は中身をそのまま掛けていいの?
なんでそんな不公平なことが起きるの?

不公平に思えるのも無理はないのぅ。
じゃが、ここにはルートの誕生のルールと、掛け算の性質が見事に噛み合った美しい理由があるのじゃ。順番に見ていこうかの。
なぜルート同士は掛け算できるのか
足し算はできないのに掛け算ができる不思議

どうして足し算は合体できないのかな?
中身を足して \sqrt{2+3} = \sqrt{5} にしちゃダメなの?

前回の近似値の知識を使って、実際に確かめてみるのじゃ。
\sqrt{1} と \sqrt{1} を足したらどうなるかの?

\sqrt{1} = 1 だから、1 + 1 = 2 だよね。

もし足し算で中身を足してよいなら、\sqrt{1} + \sqrt{1} = \sqrt{1+1} = \sqrt{2} になるはずじゃな。

あ!\sqrt{2} はおよそ 1.414 だったから、2 と全然違う!

その通りじゃ。
もし中身を足してよいとすると、1 + 1 = 1.414\dots というおかしなことになってしまう。
だから、ルートの足し算は中身を合体させては絶対にいかんのじゃ。

本当だ、数字のつじつまが完全に崩れちゃうんだね。
じゃあ、掛け算はどうして中身を掛けていいの?
2乗してみると掛け算できる理由がわかる

そこで登場するのが、ルートの最も基本的な原点じゃ。
「ルートとは、2乗すると中身になる正の数」じゃったな。

うん、\sqrt{6} は「2乗すると 6 になる正の数」のことだよね。

ならば、\sqrt{2} \times \sqrt{3} という数全体を、実際に2乗してみるのじゃ。

塊全体を2乗するの?やってみるよ!
\begin{aligned} (\sqrt{2} \times \sqrt{3})^2 &= (\sqrt{2} \times \sqrt{3}) \times (\sqrt{2} \times \sqrt{3}) \\ &= (\sqrt{2} \times \sqrt{2}) \times (\sqrt{3} \times \sqrt{3}) \\ &= 2 \times 3 \\ &= 6 \end{aligned}

あ!掛け算は順番を自由に入れ替えられるから、\sqrt{2} 同士、\sqrt{3} 同士を先に掛けることができるんだ!
それぞれルートが外れて 2 \times 3 = 6 になったよ!

見事な計算じゃ。
\sqrt{2} \times \sqrt{3} という数は、2乗すると 6 になる正の数じゃ。そして、2乗して 6 になる正の数は、ルートの約束によって \sqrt{6} と書くことになっておる。

2乗したら 6 になったんだから、この数の正体は \sqrt{6} そのものなんだ!

その通りじゃよ。掛け算の順序を自由に変えられる性質と、ルートの「2乗すると元に戻る」という定義が完璧に噛み合っておるのじゃ。一般に、a > 0, b > 0 のとき、次の公式が成り立つぞい。
\sqrt{a} \times \sqrt{b} = \sqrt{ab}
割り算も同じルールで合体できる

博士、掛け算ができるなら、割り算はどうなるの?

割り算は逆数の掛け算と同じじゃから、全く同じ理屈が成り立つぞい。
実際に分数で2乗してみるかの?

うん!\dfrac{\sqrt{6}}{\sqrt{2}} を丸ごと2乗してみるね。
\begin{aligned} \left(\dfrac{\sqrt{6}}{\sqrt{2}}\right)^2 &= \dfrac{(\sqrt{6})^2}{(\sqrt{2})^2} \\ &= \dfrac{6}{2} \\ &= 3 \end{aligned}
2乗したら 3 になった!ということは、2乗して 3 になる正の数だから、正体は \sqrt{3} だ!

正解じゃよ。
分数の2乗は分子と分母をそれぞれ2乗すればよいから、ルートが綺麗に外れて \dfrac{6}{2} = 3 になるのじゃ。

割り算も、ルートを1つにまとめて中身同士で割り算していいんだね!

そうじゃ。a > 0, b > 0 のとき、次の公式が成り立つぞい。
\dfrac{\sqrt{a}}{\sqrt{b}} = \sqrt{\dfrac{a}{b}}
\sqrt{a} \div \sqrt{b} = \sqrt{a \div b}
なぜルートの外に数字を出すのか
ルートの中の2乗のペアは外に出られる

掛け算と割り算がまとめられるのは分かったよ。
でも、学校の問題で \sqrt{12} をそのまま書くとバツにされて、2\sqrt{3} に直さなきゃいけないよね。
あれは何をしているの?

それはの、さっきの掛け算の公式を、今度は「逆向き」に使っておるのじゃよ。

逆向き?

\sqrt{ab} = \sqrt{a} \times \sqrt{b} ということじゃ。\sqrt{12} の中身を、掛け算の形に分解してみるのじゃ。

12 = 4 \times 3 だから……
\begin{aligned} \sqrt{12} &= \sqrt{4 \times 3} \\ &= \sqrt{4} \times \sqrt{3} \\ &= 2 \times \sqrt{3} \\ &= 2\sqrt{3} \end{aligned}
あ!\sqrt{4} は 2乗すると 4 になる数だから、ルートが取れて整数の 2 になるんだ!

その通りじゃ。
ルートの中に「2乗の数(平方数)」が入っているときは、ルートの屋根を脱出して、外の整数になることができるのじゃよ。

中身を素因数分解すればいいんだね。
12 = 2^2 \times 3 だから、2のペアが屋根の外に出て 2 になって、ペアになれなかった 3 だけがルートの中に残るんだ!

良い理解じゃ。
ルートの中に2乗のペアがあれば、1つ分として外に出せるのじゃな。
ルートの中身を一番小さく整理する意味

仕組みは分かったけど、どうしてわざわざ 2\sqrt{3} に直さなきゃいけないの?
\sqrt{12} のままでも同じ大きさの数だよね?

素晴らしい着眼点じゃな。理由は大きく2つあるのじゃ。
1つ目は、分数の「約分」と同じで、答えの書き方を統一するためじゃ。

約分と同じ?

たとえば \dfrac{2}{4} は \dfrac{1}{2} と約分して答えるのがルールじゃな。
\sqrt{12} と 2\sqrt{3} も、人によって書き方がバラバラだと答え合わせが大変じゃから、ルートの中身を最も小さい自然数にしておくという約束があるのじゃ。

なるほど!統一するためのルールなんだね。
もう1つの理由は?

2つ目こそが、数学において決定的に重要な理由じゃ。
ルートの中身を揃えておくことで、「同じ種類の数」として足し算や引き算ができるようになるからじゃ。

えっ!さっき足し算はできないって言っていたのに、足し算ができるようになるの?

たとえば、\sqrt{12} + \sqrt{27} という式を見てみるのじゃ。このままだと中身が違うから足しようがないの。
じゃが、それぞれ a\sqrt{b} の形に変形してみるとどうなるかの?

やってみるよ!\sqrt{12} = 2\sqrt{3} で、27 = 9 \times 3 = 3^2 \times 3 だから \sqrt{27} = 3\sqrt{3} だよね。
\sqrt{12} + \sqrt{27} = 2\sqrt{3} + 3\sqrt{3}
あ!どちらも「\sqrt{3}」が基準になっている!
文字式の 2x + 3x = 5x と同じだ!

その通りじゃ!
\sqrt{3} という共通の単位で揃ったから、2 + 3 = 5 を計算して、5\sqrt{3} とまとめることができるのじゃよ。

すごい!
ルートの中身を小さく揃えるのは、文字式のように足し算や引き算をするための準備だったんだね!
演習問題
ルートの乗除と a\sqrt{b} への変形について、実際の演習問題を解いて確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
(1)
ルート同士の掛け算は、中身同士をそのまま掛けて1つのルートにまとめる。
\begin{aligned} \sqrt{5} \times \sqrt{7} &= \sqrt{5 \times 7} \\ &= \sqrt{35} \end{aligned}
答え:\sqrt{35}
(2)
割り算は中身同士をそのまま割って1つのルートにまとめる。
\begin{aligned} \sqrt{42} \div \sqrt{6} &= \sqrt{\dfrac{42}{6}} \\ &= \sqrt{7} \end{aligned}
答え:\sqrt{7}
(3)
外の整数同士、ルートの中身同士をそれぞれ掛ける。
\begin{aligned} 2\sqrt{3} \times 4\sqrt{2} &= (2 \times 4) \times (\sqrt{3} \times \sqrt{2}) \\ &= 8 \times \sqrt{3 \times 2} \\ &= 8\sqrt{6} \end{aligned}
答え:8\sqrt{6}
問題 2 の解答・解説
(1)
中身の 24 を素因数分解して2乗のペアを見つける。
24 = 2^3 \times 3 = 2^2 \times 6
2乗の数である 2^2 をルートの外に出す。
\begin{aligned} \sqrt{24} &= \sqrt{2^2 \times 6} \\ &= 2\sqrt{6} \end{aligned}
答え:2\sqrt{6}
(2)
中身の 72 を素因数分解する。
72 = 2^3 \times 3^2 = (2 \times 3)^2 \times 2 = 6^2 \times 2
(または 72 = 36 \times 2 = 6^2 \times 2)
2乗の数である 6^2 をルートの外に出す。
\begin{aligned} \sqrt{72} &= \sqrt{6^2 \times 2} \\ &= 6\sqrt{2} \end{aligned}
答え:6\sqrt{2}
問題 3 の解答・解説
(1)
大きな数(12 \times 6 = 72)に掛けてから変形してもよいが、先に a\sqrt{b} の形に変形してから計算すると素早く正確に求まる。
\sqrt{12} = 2\sqrt{3} より、
\begin{aligned} \sqrt{12} \times \sqrt{6} &= 2\sqrt{3} \times \sqrt{6} \\ &= 2\sqrt{18} \end{aligned}
ここで \sqrt{18} = \sqrt{3^2 \times 2} = 3\sqrt{2} であるから、
\begin{aligned} 2\sqrt{18} &= 2 \times 3\sqrt{2} \\ &= 6\sqrt{2} \end{aligned}
答え:6\sqrt{2}
(2)
分数にしてルートを1つにまとめ、中身を約分する。
\begin{aligned} \sqrt{18} \div \sqrt{8} &= \dfrac{\sqrt{18}}{\sqrt{8}} \\ &= \sqrt{\dfrac{18}{8}} \\ &= \sqrt{\dfrac{9}{4}} \\ &= \dfrac{\sqrt{9}}{\sqrt{4}} \\ &= \dfrac{3}{2} \end{aligned}
答え:\dfrac{3}{2}
まとめ

博士、ありがとう!
ルート同士の掛け算ができる理由と、a\sqrt{b} に直す意味がスッキリ整理できたよ。

それは何よりじゃ。
今回の最も重要なポイントを振り返っておこうかの。

- 1つ目は、ルート同士の掛け算と割り算は、全体を2乗すると定義通りに計算できるから、中身同士をそのまま掛けて(割って)1つのルートにまとめていいこと。
- 2つ目は、足し算は中身同士を足してはいけないこと。
- 3つ目は、ルートの中の2乗のペアは外に出して整数にできること。
- 4つ目は、a\sqrt{b} の形に直すことで、共通の単位が作られて、文字式と同じように足し算ができる準備になること!

完璧なまとめじゃよ。ルートの掛け算と変形が身につけば、ルートの計算の半分以上を攻略したも同然じゃ。
次回は平方根シリーズの最終回、「分母の有理化」と「ルートの加減(足し算・引き算)」を扱っていくのじゃよ。

分母にルートがあるとなんでいけないのか、ずっと気になっていたんだ。次回も楽しみだよ!



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