

博士、前回の「右辺を0にして一次方程式2つに分解する」仕組み、すごく面白かったよ!

ほぅ、0の特別な性質が腑に落ちたようじゃな。右辺を0に揃える意味が分かれば、方程式の視界が大きく開けるからのぅ。

うん!それでね、学校で x^2 = 5x という問題を解いてみたんだ。
一次方程式のときは 2x = 6 の両辺を 2 で割ったから、同じように両辺を x で割って「x = 5」って答えたんだよ。そしたら先生にバツにされちゃった!

ふむ、まさに誰もが一度は通る「消えるゼロの罠」に綺麗に引っかかってしまったようじゃな。

えっ、罠なの!?
両辺を同じもので割るのは等式の基本的なルールのはずなのに、どうして x で割っちゃダメなの?

実に多くの人が抱く切実な疑問じゃ。
そこには、算数の頃から固く禁じられてきた「ある絶対の掟」と、解が消滅してしまう深刻な理由があるのじゃよ。
なぜ両辺を文字で割るとバツになるのか
解が消滅してしまう消えるゼロの罠

どうして両辺を x で割ってはいけないのかな?

まずは、すくぞうが解いた方程式 x^2 = 5x をよく観察してみるのじゃ。すくぞうは x = 5 と答えたな。

うん、5^2 = 25 で、5 \times 5 = 25 だから、ちゃんと成り立っているよ。

うむ、x = 5 が解であることは間違いない。
じゃが、前回のステップ1で学んだことを思い出してごらん。二次方程式の解は、基本的にはいくつあるはずじゃったかの?

……あ!
基本的には2つあるはずだ!

その通りじゃ。では、もう1つの解は何じゃと思うかの?
たとえば、x = 0 を両辺に代入してみるのじゃ。

x = 0 を代入すると、左辺は 0^2 = 0 で、右辺は 5 \times 0 = 0 だから……
あ!0 = 0 になって成り立っている!x = 0 も立派な答えじゃないか!

そうなんじゃよ!この方程式の本当の答えは x = 0, \ 5 の2つなのじゃ。
両辺を x で割ってしまったことで、x = 0 という大切な解がこの世から消滅してしまったのじゃよ。

僕が自分で答えを消しちゃっていたんだね……!
でも、どうして x で割ると 0 が消えちゃうの?

算数の頃に「ゼロで割ってはいけない」と習ったのを覚えておるかの?

うん、「5 \div 0」みたいな計算は答えが決まらないから絶対にやっちゃダメって習ったよ。

そうじゃ。いま x は 0 になる可能性がある数じゃな。
それなのに両辺を x で割るということは、「未知数が 0 かもしれないのに、0で割る操作をしてしまった」ことになるのじゃよ。

あっ!文字 x で割るってことは、「0で割る禁止令」を破ってしまったのと同じなんだ!
共通因数をくくり出して解を救出する

その通りじゃ。
だから方程式の世界では、「0になる可能性のある文字で両辺を割ることは絶対に禁止」という鉄則があるのじゃよ。

よくわかったよ。
じゃあ、x^2 = 5x はどうやって解けばいいの?

そこで前回の「右辺を0にする」という基本に戻るのじゃ。
まず右辺の 5x を左辺に移項してみるのじゃ。

移項すると符号が変わるから、
x^2 - 5x = 0
になるね。

うむ。次に左辺を見てごらん。
共通因数の x があるじゃろう。因数分解してみるのじゃ。

x を前にくくり出すと、
x(x - 5) = 0
になるよ!

見事じゃ。これで AB = 0 の形が完成したの。
掛けて 0 になるということは、どういうことじゃったかの?

x = 0 または x - 5 = 0 だから……
x = 0 と x = 5 だ!
消えちゃっていた 0 がちゃんと救出されたよ!

ふぉっふぉっふぉ、無事に解が2つ揃ったのぅ。
文字で割るのではなく、「移項して因数分解する」ことこそが、解を漏らさず捕まえる正しい作法なのじゃ。
平方根と因数分解による2大解法
平方根の考え方で解くタイプの特徴

文字で割っちゃダメな理由は完全に納得できたよ!
二次方程式には、因数分解で解くやり方のほかに、平方根を使って解くやり方もあるって聞いたんだけど、どう違うのかな?

良い質問じゃな。実は二次方程式には、問題の式の形によって「真っ先に選ぶべき2大解法」があるのじゃ。
まず1つ目が「平方根の考え方を利用する解法」じゃ。たとえば、次のような式じゃな。
(x - 3)^2 = 7

あ!左辺がカッコの2乗になっているね。
これ、カッコを展開して x^2 - 6x + 9 = 7 って直してから解くんじゃないの?

そこがまさに、多くの人が陥る「遠回りの罠」じゃ!
わざわざ展開して整理すると、計算の手間が増えてミスをしやすくなるのじゃよ。

展開しちゃダメなの?
じゃあどうやって解くの?

左辺全体を「大きなカタマリ X」と見てごらん。
X^2 = 7 ならば、すくぞうはどう解くかの?

2乗して 7 になる数だから、平方根を使って X = \pm \sqrt{7} だよ!

その通りじゃ!カタマリを元に戻せば、
\begin{aligned} x - 3 &= \pm \sqrt{7} \\ x &= 3 \pm \sqrt{7} \end{aligned}
と、展開することなく2行で答えにたどり着けるのじゃよ。

すごい!
カッコの2乗の形になっているときは、わざわざ展開するんじゃなくて、両辺の平方根をとればあっという間に解けちゃうんだね!

そうなんじゃ。
x^2 = k や (x + a)^2 = k のように、1次の x がバラバラに散らばっていない形を見かけたら、迷わず平方根の考え方を使うのが最短ルートじゃよ。
因数分解の公式を使い分ける手順

平方根を使うタイプは形がわかりやすいね!
じゃあ、もう一つの「因数分解で解くタイプ」はどう見分ければいいの?

x^2 - 5x + 6 = 0 のように、x^2 の項だけでなく、1次の x の項も混ざっている標準的な形じゃな。
この形を見たら、まず「左辺が因数分解できないか」を疑うのじゃ。

因数分解の公式を思い出すんだね!

その通りじゃ。
中学校で使う主なパターンは次の3つじゃよ。
1. 和と積の公式:
\begin{aligned} x^2 + (a+b)x + ab &= 0 \\ (x + a)(x + b) &= 0 \end{aligned}
掛けて末尾、足して真ん中になる2つの数を探す一番よく使う公式じゃな。解は x = -a, \ -b になる。
2. 平方の公式(重解):
\begin{aligned} x^2 + 2ax + a^2 &= 0 \\ (x + a)^2 &= 0 \end{aligned}
同じカッコの2乗になる場合じゃな。このときは解が1つに重なって x = -a(重解)になるのじゃ。
3. 2乗引く2乗の公式:
\begin{aligned} x^2 - a^2 &= 0 \\ (x + a)(x - a) &= 0 \end{aligned}
真ん中の x の項がない引き算の形じゃな。解は x = \pm a となる。もちろんこれは x^2 = a^2 として平方根の考え方で解いてもよいのじゃよ。

なるほど!式を見て、
カタマリの2乗なら「平方根」、
バラバラの式なら「右辺を0にして因数分解」、
と判断すればいいんだね!

見事な見分け方じゃよ。
二次方程式を見たら、まずこの2つの道具で解けないかを考えるのが鉄則じゃ。
演習問題
文字で割る落とし穴の回避と、平方根や因数分解を使った解き方について、実際の演習問題を解いて確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
両辺を文字 x で割らずに、右辺を0にして共通因数をくくり出して解く。
(1)
右辺の 8x を左辺に移項する。
x^2 - 8x = 0
左辺を共通因数 x で因数分解する。
x(x - 8) = 0
x = 0 または x - 8 = 0 であるから、
x = 0
x - 8 = 0 より x = 8
答え:x = 0, \ 8
(2)
両辺を 3 で割って整理する。
x^2 - 4x = 0
共通因数 x でくくり出す。
x(x - 4) = 0
x = 0 または x - 4 = 0 であるから、
x = 0
x - 4 = 0 より x = 4
答え:x = 0, \ 4
問題 2 の解答・解説
左辺を展開せず、x^2 = k または (x + a)^2 = k の形を作って両辺の平方根をとる。
(1)
両辺を 2 で割る。
x^2 = 25
両辺の平方根をとる。
x = \pm 5
答え:x = \pm 5(または x = 5, \ -5)
(2)
両辺の平方根をとる。
x + 5 = \pm \sqrt{11}
左辺の 5 を右辺に移項する。
x = -5 \pm \sqrt{11}
答え:x = -5 \pm \sqrt{11}
(3)
-12 を右辺に移項する。
(x - 2)^2 = 12
両辺の平方根をとる。
\begin{aligned} x - 2 &= \pm \sqrt{12} \\ x - 2 &= \pm 2\sqrt{3} \\ x &= 2 \pm 2\sqrt{3} \end{aligned}
答え:x = 2 \pm 2\sqrt{3}
問題 3 の解答・解説
左辺を適切な乗法公式で因数分解し、一次方程式に分解して解く。
(1)
掛けて 12、足して -7 になる2数は -3 と -4 であるから、
(x - 3)(x - 4) = 0
x - 3 = 0 より x = 3
x - 4 = 0 より x = 4
答え:x = 3, \ 4
(2)
左辺は平方式 (x + a)^2 の形であるから、
(x + 3)^2 = 0
x + 3 = 0 より x = -3
答え:x = -3
(3)
2乗引く2乗の因数分解公式を利用する。
(x + 4)(x - 4) = 0
x + 4 = 0 より x = -4
x - 4 = 0 より x = 4
(※x^2 = 16 より x = \pm 4 と求めてもよい)
答え:x = \pm 4(または x = 4, \ -4)
まとめ

博士、ありがとう!
x で割ってはいけない理由も、2つの解き方の見分け方もよく整理できたよ!

うむ、素晴らしい吸収力じゃったのぅ。
今回学んだ要点を振り返っておこうかの。

1つ目は、両辺を文字 x で割ると x = 0 という解が消えてしまうから、絶対に文字で割らずに移項して因数分解すること。
2つ目は、カタマリの2乗の形になっているときは展開せず、平方根の考え方で両辺にルートをつけること。
3つ目は、1次の項がある式は、右辺を0にして因数分解の公式を試すこと!

見事な整理じゃよ。
これで基本的な二次方程式はほとんど解けるようになったのじゃ。

でも博士、ふと気になったんだけど……
もし因数分解ができない式が出てきたらどうするの?
たとえば x^2 + 3x - 1 = 0 みたいな式は、掛けて -1 で足して 3 になる整数なんて見つからないよ!

ほぅ、実に核心を突く素晴らしい疑問じゃな!
因数分解ができない方程式にぶつかったとき、どんな二次方程式でも必ず解ける強力な解法があるのじゃ。

どんな二次方程式でも解ける解法!?
それって何?

それが、中学生が恐れる呪文のような公式「解の公式」なのじゃよ。
次回はその解の公式がどうやって誕生したのか、平方完成の技術からじっくり解き明かしていこうかのぅ。

解の公式!
名前は聞いたことあるけど難しそうだと思ってたんだ。誕生の仕組みを知るのが楽しみだな!



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