

博士、前回の記事で三平方の定理の引き算の計算をやって、斜辺以外の長さもルートを使って求められるようになったよ!

うむ、方程式の移項と結びつけて、とてもスムーズに理解できておったの。三平方の定理の計算の基本はもうバッチリじゃ。

それでね、学校で次のページを開いたら「特別な直角三角形の3辺の比」っていうのが出てきたんだ。

ほぅ、三角定規の形のことじゃな。

そう!小学校のときから使っている2枚の三角定規なんだけど、急に「1:1:√2」と「1:2:√3」を暗記しなさいって言われて戸惑っているんだ。

ふむ、形の理由も分からぬまま、いきなり数字とルートの暗記を迫られたら面食らってしまうのも無理はないの。

うん。
なんで三角定規の辺の比は、この決まった数字になるのかな?

核心を突く良い問いじゃな。
実はあの2枚の三角定規は、身近な美しい図形を真っ二つに切った形そのものなのじゃよ。

身近な図形を半分に切った形?

そうじゃ。
元の図形さえ分かれば、三平方の定理を使って比の正体が自然と見えてくるのじゃよ。順を追って見ていこうかの。
三角定規の形に隠された秘密
正方形を半分に切った直角二等辺三角形

三角定規の1枚目は、角が45度、45度、90度になっている三角形だよね。

その通りじゃ。
直角以外の2つの角がどちらも45度で等しいから、直角二等辺三角形とも呼ばれるの。

この三角形って、もともとはどんな図形だったの?

正方形を対角線でまっぷたつに切った形を思い浮かべてみるのじゃ。

あ、本当だ!
正方形の4つの角は全部90度だから、対角線で半分に折ると角が半分の45度になるね!

見事な着眼点じゃ。
正方形は4本の辺の長さがすべて等しいから、直角をはさむ2本の辺の長さも当然まったく同じになるのじゃよ。

だから「直角二等辺三角形」なんだね。
直角をはさむ2辺の比が「1対1」になるのは当たり前なんだ!

その通りじゃ。
まずは直角をはさむ2本の辺が等しいという事実が、すべての出発点になるのじゃよ。
正三角形を半分に切った特別な直角三角形

じゃあ、もう1枚の細長い三角定規はどうなのかな?
角は30度、60度、90度だよね。

うむ。
こちらは3つの角がすべて60度である「正三角形」を思い出してみるのじゃ。

正三角形!
3本の辺が全部同じ長さで、3つの角が全部60度の図形だね。

その正三角形のてっぺんの角から、向かいの底辺に向かって真っ直ぐ垂直に線を引いて、左右に二等分してみるのじゃ。

てっぺんの角は60度だから、半分に割ると30度になる!
底辺と交わる角は垂直だから90度で、残りの角はもともとの60度だ!

まさにその通りじゃ。
30度、60度、90度の三角定規は、正三角形をきれいに半分に割った形そのものなのじゃよ。

そうだったんだ!
そう考えると、斜辺と底辺の長さの関係も見えてくる気がするよ。

ほぅ、素晴らしいセンスじゃな。
底辺の長さはどうなっておるかの?

元の正三角形の1辺をちょうど真ん中で半分に割ったんだから、底辺の長さは元の1辺の「半分」になっているはずだよ!

その通りじゃ。
斜辺は元の正三角形の1辺の長さそのもので、底辺はその半分の長さになる。つまり、斜辺と底辺の比は最初から「2対1」と決まっておるのじゃよ。
三平方の定理で比の正体を確かめる
直角二等辺三角形でルート2が現れる仕組み

元の図形が正方形と正三角形だってことは分かったよ。
でも、あの「ルート2」や「ルート3」はどこから出てくるの?

そこで前回学んだ三平方の定理の出番じゃ。
まずは直角二等辺三角形から計算してみようかの。

直角をはさむ2つの辺の長さを、一番簡単な「1」として考えてみるね。

うむ。直角をはさむ2辺がどちらも 1 のとき、斜辺の長さを x と置いて、三平方の定理の式を立ててみるのじゃ。

直角をはさむ2辺の2乗を足すと、斜辺の2乗になるから……
\begin{aligned} x^2 &= 1^2 + 1^2 \\ &= 1 + 1 \\ &= 2 \end{aligned}

うむ、左辺変数をすっきりと整理して美しい立式じゃ。
長さは必ず正の数じゃから、x > 0 より x = \sqrt{2} となるの。

あ!
1 と 1 から、斜辺の \sqrt{2} が出てきた!

そうじゃ。
直角をはさむ2辺が 1 なら、斜辺は必ず \sqrt{2} 倍になる。
これが、直角二等辺三角形の辺の比が 1 : 1 : \sqrt{2} になる正体なのじゃよ。

正方形の対角線を引いて三平方の定理を使っただけで、自然に \sqrt{2} が出てくるんだね!
正三角形の半分で1対2対ルート3が出る仕組み

じゃあ、30度・60度・90度の三角形で \sqrt{3} が出てくる仕組みも、三平方の定理で計算できるのかな?

もちろんじゃ。
正三角形を半分に割った形を考えてみよう。計算が分数にならぬよう、元の正三角形の1辺の長さを 2 と置いてみるのじゃ。

なるほど!1辺を 2 にすれば、半分に割った底辺の長さはちょうど 1 になるね!

その通りじゃ。すると斜辺の長さは 2、底辺の長さは 1 じゃな。
残った高さの長さを h と置いて、前回の「引き算の三平方」で計算してみるのじゃ。

斜辺の2乗から、もう1つの辺の2乗を引けばいいんだよね!
\begin{aligned} h^2 &= 2^2 - 1^2 \\ &= 4 - 1 \\ &= 3 \end{aligned}

見事な計算じゃ。
h > 0 より、高さは h = \sqrt{3} となるの。

すごい!
ここで \sqrt{3} が出てきた!

これで3本の辺がすべて出揃ったの。
最も短い底辺が 1、最も長い斜辺が 2、そして中間の高さが \sqrt{3} じゃ。
直角をはさむ辺と斜辺の順に並べると 1 : \sqrt{3} : 2、あるいは覚えやすい順序として 1 : 2 : \sqrt{3} と呼ぶこともあるのじゃよ。

丸暗記だと思っていた比が、正三角形の高さの三平方の計算そのものだったんだね!
すごくすっきりしたよ。
比を使って辺の長さを求める手順
どの辺が1でどれがルート3かを見分けるコツ

仕組みは分かったんだけど、実際に問題を解くときに、どの辺が 1 でどの辺が 2 や \sqrt{3} なのか分からなくなっちゃいそうだよ。
特に 2 と \sqrt{3} ってどっちが長いの?

そこは多くの人が最初につまずきやすい重要なポイントじゃな。
\sqrt{3} はおよそ 1.73 じゃから、2 のほうが大きい数じゃ。

あ、そうか!
2 = \sqrt{4} だから、\sqrt{4} のほうが \sqrt{3} より大きいんだね!

その通りじゃ。
したがって、直角三角形の中で最も長い斜辺が 2 になるのじゃよ。辺の長さを角の大きさとセットで整理しておくと、絶対に取り違えなくなる。

角とセットで見分けるの?

そうじゃ。向かい合う角の大きさに注目するのじゃよ。
最も小さい角である30度の向かい側が、最も短い辺の 1。
直角である90度の向かい側が、最も長い斜辺の 2。
中間の大きさである60度の向かい側が、中間の長さである \sqrt{3} じゃ。

「一番小さい30度の向かいが1」「直角の向かいが一番長い2」「60度の向かいがルート3」って覚えると、図形が回転していてもすぐに見分けられるね!
比例式を作って長さを求める計算の流れ

辺の比が分かったら、実際の長さはどうやって計算すればいいのかな?

中1で学んだ「比例式」を使うのが確実な手順じゃ。
比の値と実際の長さをイコールで結ぶのじゃよ。

例えば、30度・60度・90度の直角三角形で、一番短い辺が 5\text{ cm} のとき、斜辺 x\text{ cm} を求めたいときはどう書けばいい?

比の対応をそのまま式にするのじゃ。
「比の基準」と「実際の長さ」の順序を揃えて並べるのがコツじゃよ。

一番短い辺と斜辺の比は 1 : 2 だから……
1 : 2 = 5 : x

うむ、正しい立式じゃ。
あとは内項の積と外項の積が等しいという比例式の性質を使えばよい。

外側を掛けた 1 \times x と、内側を掛けた 2 \times 5 が等しいから、x = 10\text{ cm} になるんだね!
三平方の2乗の計算をしなくても求められたよ!

見事じゃ。
特別な角(45度や30度・60度)を持つ直角三角形では、三平方の定理の2乗計算を毎回しなくても、この比の性質を使うことで長さをスムーズに求めることができるのじゃよ。
演習問題
以下の問題で、特別な直角三角形の辺の比を使った計算方法を確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
(1)
直角二等辺三角形の辺の比は、直角をはさむ辺と斜辺で 1 : \sqrt{2} である。
直角をはさむ1辺が 4\text{ cm}、斜辺が x\text{ cm} であるから、比例式を立てると、
1 : \sqrt{2} = 4 : x
外項の積と内項の積は等しいので、
x = 4\sqrt{2}
よって、斜辺の長さは 4\sqrt{2}\text{ cm} である。
(2)
直角をはさむ1辺と斜辺の比は 1 : \sqrt{2} である。
直角をはさむ1辺が y\text{ cm}、斜辺が 6\text{ cm} であるから、比例式を立てると、
1 : \sqrt{2} = y : 6
内項の積と外項の積より、
\sqrt{2}y = 6
両辺を \sqrt{2} で割り、分母の有理化を行うと、
\begin{aligned} y &= \dfrac{6}{\sqrt{2}} \\ &= \dfrac{6\sqrt{2}}{2} \\ &= 3\sqrt{2} \end{aligned}
よって、直角をはさむ1辺の長さは 3\sqrt{2}\text{ cm} である。
問題 2 の解答・解説
(1)
30°、60°、90°の直角三角形における辺の比は、30°の向かいの辺、60°の向かいの辺、斜辺の順に 1 : \sqrt{3} : 2 である。
まず、最も短い辺と斜辺の比は 1 : 2 であるから、
1 : 2 = 3 : x
x = 6
次に、最も短い辺と60°の向かいの辺の比は 1 : \sqrt{3} であるから、
1 : \sqrt{3} = 3 : y
y = 3\sqrt{3}
よって、x = 6\text{ cm}、y = 3\sqrt{3}\text{ cm} である。
(2)
辺の比は 1 : \sqrt{3} : 2 である。
まず、最も短い辺 a と斜辺の比は 1 : 2 であるから、
1 : 2 = a : 8
外項と内項の積より、
\begin{aligned} 2a &= 8 \\ a &= 4 \end{aligned}
次に、60°の向かいの辺 b は、最も短い辺 a の \sqrt{3} 倍であるから、
1 : \sqrt{3} = 4 : b
b = 4\sqrt{3}
よって、a = 4\text{ cm}、b = 4\sqrt{3}\text{ cm} である。
まとめ

博士、三角定規の「1:1:√2」と「1:2:√3」の正体がすごくよく分かったよ!

うむ、今日の要点を振り返っておこうかの。

直角二等辺三角形は「正方形を対角線で半分に切った形」だから直角をはさむ2辺が等しくて、三平方の定理から斜辺が \sqrt{2} になるんだよね。

その通りじゃ。
そして30度・60度・90度の三角形は「正三角形を半分に切った形」じゃから、斜辺が 2、底辺が半分の 1、高さが引き算の三平方から \sqrt{3} になるのじゃったな。

丸暗記しなくても、元の正方形や正三角形を思い出せばいつでも比を再現できるのが心強いよ。

素晴らしい気づきじゃ。
この「角度が決まれば辺の比が決まる」という考え方は、高校数学で学ぶ「三角比(サイン・コサイン・タンジェント)」のすべての土台になっておるのじゃよ。

高校数学にもそのまま繋がっていくんだね!
次のステップに進むのが楽しみになってきたよ。

頼もしいの。
次回は三平方の定理のさらなる応用として、直方体の対角線など「立体の中の直角三角形」を見つける方法を一緒に見ていこうかの。



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