

博士!
前回で確率分布の表の意味はよく分かったんだけど、教科書を開いたら「期待値 E(X)」とか「分散 V(X)」っていう難しそうな記号がたくさん出てきたよ。

ほう、いよいよ確率変数の計算の核心に入ってきたな!
難しそうな記号に見えるかもしれんが、実はどちらも中学生や数学Ⅰで習った「平均」や「分散」の仲間なんじゃよ。

えっ、平均や分散と何が違うの?

順番に紐解いていこう。
期待値 E(X) とは何か?データの平均との違い

まず「期待値(きたいち)」についてじゃ。
英単語の Expectation(期待)の頭文字をとって E(X) と書く。

期待値って、普通のデータ分析で計算した「平均」と何が違うの?
データ分析の平均:手元にある過去のデータの平均値

データ分析の平均は、「手元にすでにあるデータ」の合計を個数で割ったものじゃ。
例えば、テストを5回受けて「80点、70点、90点、60点、100点」だったとき、合計400点を5で割って80点とするのがデータの平均じゃ。
確率変数の期待値:未来に起きる試行で見込める平均値

一方で期待値は、「これから行う試行で、1回あたり平均してどれくらいの値が見込めるか」という未来の平均値なんじゃよ。
くじ引きやギャンブルで「1回引いたときに平均して何ポイント期待できるか」という場面で使われてきた歴史がある。
なぜ「値×確率」を足し合わせると平均になるのか

でも博士、教科書の期待値の計算式を見ると、「データの合計÷個数」じゃなくて、「値 × 確率」を全部足し算しているよね。
なんで割算をしないのに平均になるの?

そこが確率分布の面白いところじゃ!
個数で割る代わりに割合(確率)を掛ける仕組み

データ分析の平均は「値を全部足して N で割る」じゃろ?
これは「値 × \dfrac{1}{N}」を足しているのと同じじゃ。
全体における各値の「割合」を掛けて足しておるんじゃな。
確率分布では、その割合が最初から「確率 P」として与えられているから、割算を丸ごと省略して「値 × 確率」を足すだけで平均が出るのじゃよ。

あ! 「割算を最後に一括でする」かわりに「最初から割合を掛けて足す」んだね!
サイコロの期待値が 3.5 になる計算の裏側

そうじゃ。サイコロの出る目 X の期待値 E(X) を計算してみよう。
| X | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| P | \dfrac{1}{6} | \dfrac{1}{6} | \dfrac{1}{6} | \dfrac{1}{6} | \dfrac{1}{6} | \dfrac{1}{6} |
E(X) = 1 \times \dfrac{1}{6} + 2 \times \dfrac{1}{6} + 3 \times \dfrac{1}{6} + 4 \times \dfrac{1}{6} + 5 \times \dfrac{1}{6} + 6 \times \dfrac{1}{6}
計算すると \dfrac{21}{6} = 3.5 になる。
サイコロを何度も振ると、平均して 3.5 の目が出ると見込めるわけじゃな。
確率変数の分散 V(X) と計算の工夫

期待値は「平均」の進化系なんだね!
じゃあもう一つの「分散 V(X)」は何を表しているの?

分散は、英語の Variance(分散)の頭文字じゃ。
意味はデータ分析のときと同じで、「確率変数の値が平均(期待値)からどれくらい離れて散らばっているか」を表す指標じゃ。
確率変数の値の散らばり具合(ブレ)を表す

期待値が同じ 3.5 でも、「いつも3か4しか出ない確率分布」と「1か6しか出ない確率分布」では、後者のほうがブレが大きいじゃろ?
そのブレの大きさを数値にしたのが分散 V(X) じゃ。
2乗の平均引き平均の2乗という便利な公式

分散の計算って、偏差の2乗に確率を掛けて足すから大変そうだね……。

うむ。そこでよく使われるのが、計算を劇的に楽にするこの公式じゃ。
V(X) = E(X^2) - {E(X)}^2日本語で言えば「2乗の平均 ひく 平均の2乗」じゃな!
X^2(各値を2乗した値)の期待値を計算して、そこから元の期待値 E(X) の2乗を引き算するだけで分散が求まるのじゃ。
X を何倍かして足したときの変化(aX+b)

教科書の最後のほうに E(aX+b) とか V(aX+b) っていう公式も出てくるんだけど、あれはどう理解すればいいの?

すべての値 X を a 倍して b を足したとき、平均や分散がどうなるかというルールじゃな。
期待値 E(aX+b):全体がずれるのでそのまま変化する

期待値は平均点のようなものだから、全員の点数を a 倍して b 点加算したら、平均点もそのまま a 倍して b 点増える。
E(aX+b) = a E(X) + b
直感的にも分かりやすいじゃろ?
分散 V(aX+b):全体を並行移動しても散らばりは変わらない

うん!
じゃあ分散 V(aX+b) はどうなるの?

ここがポイントじゃ!
足し算の +b は、全員のデータをそのまま平行移動させるだけだから、「データ同士の離れ具合(散らばり)」は一切変わらん。だから +b は消えてなくなるのじゃ。
一方で a 倍すると、離れ具合は a^2 倍に広がる(分散は2乗の単位だからな)。
V(aX+b) = a^2 V(X)

あ! 「全体を平行移動しても、データのバラツキ自体は広がらないから +b は関係ない」んだね!
まとめ

期待値 E(X) は「未来の見込み平均」、分散 V(X) は「値のブレ具合」のことで、どちらもデータ分析の平均・分散の考え方とつながっていたんだね!

うむ!
期待値と分散の計算ルールがマスターできたら、次はいよいよ有名な確率分布である「二項分布(にこうぶんぷ)」へ進むぞ。
コイン投げのように同じことを何度も繰り返すとき、なぜ公式一発で計算できるのかを解き明かしていこう。
次回は 「二項分布ってなに?」について解説していくぞ。



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