
博士、前回の「足して真ん中、掛けて後ろ」はすっごくよく分かったよ!
面積図と筆算のおかげで、公式が頭に焼き付いた感じがするんだ。

うむ、基本の乗法公式をしっかり腑に落とせたようじゃな。
仕組みから理解しておけば、計算に迷いがなくなるのじゃよ。

うん!でも、教科書をめくったら別の公式が出てきてさ……
カッコの右上に小さな2がついてる「2乗の公式」だよ。

うむ、(x+a)^2 と (x-a)^2 のことじゃな。
実はここで、多くの中学生が同じ間違いをして大失点してしまうのじゃ。

えっ、同じ間違い?
カッコを2乗するだけだから、x^2 + a^2 になるんじゃないの?

まさにそれじゃ!
なぜ真ん中に 2ax という項が湧いて出るのか、そして「和と差の積」ではなぜ真ん中が消えるのかを、今日じっくり解き明かすとしようかの。
なぜ2乗の公式は真ん中の項が2倍になるのか
同じカッコを2回掛ける分配法則の原理

どうして x^2 + a^2 じゃダメなの?
2乗って「同じものを2回掛ける」って意味だよね?

その通りじゃ。
(x+a)^2 とは、(x+a) というカッコ全体を2回掛けるという意味じゃな。
つまり、式で書けば (x+a)(x+a) のことじゃ。

ああっ!カッコが2つ並んでる!
前回の「総当たり戦」の分配法則だ!

うむ、気づいたな。
前回の総当たり戦で順番に掛けてみるのじゃ。

やってみるよ!
- x \times x = x^2
- x \times a = ax
- a \times x = ax
- a \times a = a^2
……あ!ax が2回出てきた!

その通りじゃ。
外側の掛け算で ax、内側の掛け算でも ax が出てくる。
この2つの同類項をまとめると、何になるかの?

ax + ax = 2ax だ!
だから真ん中が「2倍」の 2ax になるんだね!

うむ。
(x+a)^2 = x^2 + 2ax + a^2
前回の公式 (x+a)(x+b) で、b を a に置き換えたと考えてもよい。
真ん中は「足し算」じゃから、a + a = 2a となって2倍になり、後ろは「掛け算」じゃから a \times a = a^2 になるのじゃよ。
正方形の面積図で見る2つの同じ長方形

さらに、この「2倍」の正体は、一辺が x+a の大きな正方形の面積図を見るともっとよく分かるのじゃ。

一辺が x+a の正方形だね。
縦と横をそれぞれ x と a に分けると……

うむ、4つの部屋に分かれるな。
| 縦 \ 横 | x | a |
|---|---|---|
| x | x^2 | ax |
| a | ax | a^2 |
・左上の部屋:縦 x × 横 x = 面積 x^2
・右上の部屋:縦 x × 横 a = 面積 ax
・左下の部屋:縦 a × 横 x = 面積 ax
・右下の部屋:縦 a × 横 a = 面積 a^2

あっ!右上の部屋と左下の部屋が、どっちも同じ面積 ax の長方形になってる!

そうじゃ。
縦が x で横が a の長方形が、右上と左下に全く同じ形で「2枚」あるじゃろ?
もし真ん中の 2ax を忘れて x^2 + a^2 と答えてしまうと、この2枚の長方形を丸ごと捨ててしまったことになるのじゃよ。

うわあ……!図で見ると、真ん中の2枚を捨てるなんてありえないってハッキリ分かるよ。
左上の正方形と右下の正方形だけ足しても、全体の正方形には全然足りないんだね!
なぜ和と差の積は真ん中の項が消えるのか
プラスとマイナスが打ち消し合う筆算の仕組み

真ん中が2倍になる理由はすっごく納得できたよ!
じゃあ、もうひとつの「真ん中が消えちゃう公式」はどうしてなの?

(x+a)(x-a) という、「足し算」と「引き算」がペアになった掛け算じゃな。
この形を「和と差の積」と呼ぶのじゃ。

カッコの中の文字と数字が全く同じで、符号だけがプラスとマイナスで違う形だね。

うむ。これもまずは総当たり戦で展開してみよう。

順番に掛けると……
- x \times x = x^2
- x \times (-a) = -ax
- a \times x = +ax
- a \times (-a) = -a^2
……あれっ!?
-ax と +ax が出てきたよ!

うむ。真ん中の同類項をまとめるとどうなるかの?

-ax + ax = 0 だから……消えちゃった!
残るのは x^2 と -a^2 だけだ!

その通りじゃ。
(x+a)(x-a) = x^2 - a^2
小学校の筆算のように縦に並べて書いてみると、打ち消し合う様子がさらによく見えるぞい。
x + a
× x - a
─────────────
-ax - a² ← (x + a) × (-a)
x² + ax ← (x + a) × x
─────────────
x² + 0 - a² ← 縦に揃えて足すと真ん中が0に!

うわあ、縦に足すとぴったりプラスマイナスゼロになる!
真ん中の項が消えてなくなっちゃう理由が、これなら絶対に忘れないよ。
面積図の切り貼りで長方形を正方形に変形する視覚的理解

さらに、この公式も面積の変形で直感的に捉えることができるのじゃよ。
縦の長さが x-a、横の長さが x+a の長方形を考えてみるのじゃ。

縦が短くて、横が長い長方形だね。

そうじゃ。横の長さ x+a を、「x」と「a」のところで縦に切り分けてみるのじゃ。
すると、縦 x-a・横 x の長方形と、縦 x-a・横 a の細長い長方形に分かれるな。

うん、2つに分かれたよ。

この右側の細長い長方形(縦 x-a、横 a)を、くるりと横に倒して、左側の長方形の下にくっつけてみるのじゃ。

えっ、下に?
向きを変えてくっつけると……縦の長さが (x-a) + a = x になる!

その通りじゃ!
すると、一辺が x の大きな正方形ができるのじゃが……右下の角の部分だけ、すっぽりと穴が空いておるじゃろ?

あ!横が a で縦も a の正方形が1個分、足りない!

見事じゃ!
つまり、もとの長方形の面積は、「一辺が x の正方形 x^2」から「一辺が a の小さな正方形 a^2」をくり抜いた形にぴったり一致するのじゃよ。
だから x^2 - a^2 になるのじゃ。

すごい!長方形をパズルみたいに切り貼りすると、正方形から小さな正方形を引いた形にぴったり重なるんだね!
マイナスがつく2乗の公式と典型的な誤答トラップ
引き算の2乗で真ん中だけがマイナスになる理由

博士、もうひとつの公式 (x-a)^2 も気になるよ。
引き算のときは、符号はどうなるの?

うむ。(x-a)^2 も、(x-a)(x-a) と書き直して総当たりで掛けてみれば一発じゃ。
すくぞうよ、展開してみるのじゃ。

- x \times x = x^2
- x \times (-a) = -ax
- (-a) \times x = -ax
- (-a) \times (-a) = +a^2
……あ!一番後ろは「マイナス×マイナス」だからプラスになるんだ!

その通りじゃ。
真ん中は (-ax) + (-ax) = -2ax とマイナスになるが、後ろは負の数同士の掛け算じゃから必ずプラスになるのじゃよ。
(x-a)^2 = x^2 - 2ax + a^2

そっか!「真ん中は足し算だからマイナスのまま」「後ろは掛け算だからプラスになる」ってことだね!
真ん中の項を書き忘れる2乗プラス2乗の誤答原因

うむ、実に見事な理解じゃ。
ここで、テストで最も多い「2大誤答トラップ」を確認しておこうかの。

2大誤答トラップ……?

ひとつ目は、最初にすくぞうも言いかけた「真ん中の項を書き忘れるミス」じゃ。
(x+5)^2 を見て、慌てて x^2 + 25 と書いてしまう生徒が後を絶たない。

面積図の右上と左下にある「2枚の長方形」を丸ごと捨てちゃうミスだね!
真ん中に「2倍」の 2 \times 5 \times x = 10x を入れなきゃいけないんだよね。
だから答えは x^2 + 10x + 25 だ!

その通りじゃ。
そしてふたつ目のトラップは、(x-5)^2 の後ろの符号をマイナスにしてしまうミスじゃ。
真ん中がマイナスだからといって、つられて一番後ろまで -25 にしてしまうのじゃな。

後ろは (-5) \times (-5) だから、絶対にプラスの +25 だよね!

素晴らしい。
「2乗の公式は、真ん中が2倍で後ろは必ずプラス」。
この理屈を頭に刻んでおけば、どんな問題でも迷わず正解できるぞい。
演習問題
乗法公式の2乗と和と差の積について確認していきましょう。
問題 1 の解答・解説
【解答】
(1) x^2 + 8x + 16
(2) x^2 - 12x + 36
【解説】
2乗の公式 (x \pm a)^2 = x^2 \pm 2ax + a^2 を用います。
(1)
真ん中の項は 2 \times 4 \times x = 8x、最後の項は 4^2 = 16 となります。
(x+4)^2 = x^2 + 8x + 16
(2)
真ん中の項は - (2 \times 6 \times x) = -12x、最後の項は (-6)^2 = 36 となります。
(x-6)^2 = x^2 - 12x + 36
問題 2 の解答・解説
【解答】
(1) x^2 - 49
(2) 4x^2 - 12x + 9
【解説】
(1)
和と差の積の公式 (x+a)(x-a) = x^2 - a^2 を用います。
真ん中の項が相殺されて消えるため、前後の2乗の差となります。
(x+7)(x-7) = x^2 - 7^2 = x^2 - 49
(2)
x の係数が数字の場合も同様に2乗の公式を適用します。
先頭の項は (2x)^2 = 4x^2、真ん中の項は - (2 \times 2x \times 3) = -12x、最後の項は (-3)^2 = 9 となります。
(2x-3)^2 = (2x)^2 - 2 \times 2x \times 3 + 3^2 = 4x^2 - 12x + 9
まとめ

2乗の公式で真ん中が2倍になる理由も、和と差の積で真ん中が消える秘密も、分配法則と面積図で完全に納得できたよ!

うむ、式を丸暗記しようとするから混乱するのであって、長方形の切り貼りや筆算の仕組みを知っていれば、公式は自然と使いこなせるようになるのじゃ。

うん!真ん中の項を忘れたり、符号をごっちゃにしたりするミスも、理屈が分かったからもう絶対に引っかからないよ。

頼もしいのう。乗法公式の基本パターンはこれで全てマスターできたぞい。じゃが、高校入試や定期テストでは、文字が2つ混ざったり、カッコの前にマイナスがついたりする複雑な応用問題が出題されるのじゃ。

カッコの前にマイナスがついたり、文字が置き換えられたりする問題だね……!少し複雑になると途端に符号ミスしそうだよ。

次回はその「置き換えを使った工夫する展開」と「複雑な符号ミスを防ぐ展開の極意」をじっくり解説していくとしようかの!

次回もよろしくお願いします、博士!

うむ、楽しみに待っておるのじゃよ。

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